日本電信電話公社の通信ケーブル施設を使って長基線の地電位試験観測を行った。現在、日本では陸上での地電位観測で数km以上の基線で観測されているものは、他にはない。関東北部の笠間、下館および小山の各電話中継所のアースおよびその間の通信ケーブルを用いて、笠間—下館間 (26.8km) および小山—下館間 (15.7km) の地電位変化を観測した。1Hz等の短周期ノイズが大きいため、カットオフ周期が6分のローパスフイルターを通したところ笠間—下館間では非常によい記録が得られた。ここでの地磁気変化による誘導電位変化は、柿岡地磁気観測所の地電位EW成分と類似している。小山—下館間では、直流電車からと思われる電気的ノイズが非常に大きく、良い記録は得られなかった。しかし、そこでは地電位変化が、笠間—下館間に比較して非常に小さいことも確かである。このような地電位変化の相違は、主にこの付近の堆積層の厚さに関係していると考えられる。今回の試験観測の結果、電々公社のケーブル施設を使って、長基線地電位変化を観測できることがわかった。このような観測は、地下構造の解析や地下電気抵抗の時間的変化の検出に利用できると考えられる。