Papers in Meteorology and Geophysics
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36 巻, 2 号
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原著論文
  • 藤田 敏夫
    1985 年 36 巻 2 号 p. 47-60
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
     1982年のエル・チチヨン火山の爆発のあとで北太平洋の亜熱帯の下部成層圏で異常昇温がみられた。30mb面の高温偏差はエル・チチヨンの火山雲とともに西方に流された。平年値からの有意な高温偏差がライダー観測による強い後方散乱比と同時に日本南部の各地で観測された。基準化された温度偏差 (T'=(T-T)/σT)の高度-時間断面図には北太平洋の亜熱帯の東部および中部上空でσT~2σTの範囲の昇温が示された。一方、西部亜熱帯上空での昇温は驚くべきものであった。とくに、父島上空の30mb~20mbの間の気層は異常に暖められ、その最大値は7月の50mb面で5σT以上、9月には20mb面で8σTにも達した。火山雲の北方への移動を調べるために、140°E子后面に沿って平年値 (1964-1982年) からの気温偏差の高度緯度断面が5月から12月まで毎月作られた。
     6月までは、高温偏差域は日本の上では40°N以南の地域に限られていたが、7月には40°N圏をこえて北へ拡がり、ソ連邦の直達日射量の月最大値の時間変化によると火山雲は10月には50°Nをこえ、さらに11月には60°Nを通過したことが分った。
     最後に、過去3回の顕著なエル・ニーニョ現象のときの下部成層圏気温の偏差はいづれも1982-1983年のような著るしい昇温は示さず、むしろ負の偏差であった。従って1982年のエル・チチヨン爆発後の下部成層圏の昇温は1982-1983年のエル・ニーニョ現象が原因ではなかったと思われる。
  • 青木 孝
    1985 年 36 巻 2 号 p. 61-118
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
     北太平洋西部における台風の発生および日本への台風の襲来について、地域分布や年変化、経年変化などの気候学的特徴を明らかにした。台風の発生については1953-1982年の30年間を解析の対象とした。日本への台風の襲来は、さらに長い期間の資料を収集して、1913-1982年の70年間について解析した。台風が多く発生したときと少ないときの両者について、発生場所や500mb高度場、雲量、海面水温を比較した。また台風が日本へ多く襲来した年と少ない年における台風の襲来数の分布の違いを調べた。日本各地の台風襲来数の年変化型の地域差を主成分分析で明らかにし、得られた固有ベクトルに対応する振幅係数を使って日本の地域区分を行った。
     次に、東部赤道太平洋における海面水温の異常現象であるエル・ニーニョと台風の発生数との関係を見いだすとともに、北太平洋の海面水温と1953-1982年の30年間における台風の発生数および日本への台風の襲来数との相関関係を解析した。大きな相関係数が得られた海面水温、すなわち台風が発生する前年と2年前の北太平洋の海面水温を予測因子として重回帰分析を行ったところ、北太平洋の海面水温が、台風の発生数や日本への台風の襲来数を長期予報するための資料として役立つことがわかった。
  • 相原 正彦, 岡村 博文
    1985 年 36 巻 2 号 p. 119-135
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
     メソスケ一ル気象現象を追跡するのに都合の良い方程式系を提案する。この方程式系は地球回転の効果は含まず、非静力学、圧縮性の断熱理想流体の運動を記述し、閉じた領域に適用したときには、全質量と運動エネルギー、内部エネルギー及び重力ポテンシャルエネルギーからなる全エネルギーを厳密に保存する。原方程式系の性質を保有する垂直2次元微差方程式系を用いて、平均的な冬季の大気状態において発達する山岳波の数値シミュレーションを行った。数値シミュレーションの結果は同じ大気状態に対応する定常、線型、非静力学ブシネスク系の解とかなりよく合う。それは数値シミュレーションに使用した山岳が緩い傾斜をもつ分布をしているためである。この方程式系の長所及び将来への応用についても簡単に述べる。
  • 青柳 二郎
    1985 年 36 巻 2 号 p. 137-148
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
     気象レーダの降水エコー信号処理において、直線特性受信機を用いた場合のA-D変換における、量子化効果と基準直流設定電圧レベルの偏移を考慮して、実測データとシミュレーションからその測定精度を調べた。
     信号処理装置の量子化誤差は、基本的には受信機A-D変換器のビット数により規定される。この場合、信号平均装置における降水エコー変動振幅の平均回数に相当するビット数を上乗せした形で、システムを構成すれば量子化分解能を改善し得ることが分かった。
     一方、バイアの値はMTI信号処理方式よりも、Conventional方式で最適設定条件が決まるが、装置の安定度の面からその電圧変動に注意を払う必要がある。
     さらに、降水エコー信号振幅の最大値の平均値に対する比についても調べ、シミュレーションの値が2.4に対して、実測値は2.7~4であった。しかし、受信機動作範囲の飽和領域における、両分布による回路応答特性の差異は実用上認められなかった。
  • 森 俊雄
    1985 年 36 巻 2 号 p. 149-155
    発行日: 1985年
    公開日: 2007/03/09
    ジャーナル フリー
     日本電信電話公社の通信ケーブル施設を使って長基線の地電位試験観測を行った。現在、日本では陸上での地電位観測で数km以上の基線で観測されているものは、他にはない。関東北部の笠間、下館および小山の各電話中継所のアースおよびその間の通信ケーブルを用いて、笠間—下館間 (26.8km) および小山—下館間 (15.7km) の地電位変化を観測した。1Hz等の短周期ノイズが大きいため、カットオフ周期が6分のローパスフイルターを通したところ笠間—下館間では非常によい記録が得られた。ここでの地磁気変化による誘導電位変化は、柿岡地磁気観測所の地電位EW成分と類似している。小山—下館間では、直流電車からと思われる電気的ノイズが非常に大きく、良い記録は得られなかった。しかし、そこでは地電位変化が、笠間—下館間に比較して非常に小さいことも確かである。このような地電位変化の相違は、主にこの付近の堆積層の厚さに関係していると考えられる。今回の試験観測の結果、電々公社のケーブル施設を使って、長基線地電位変化を観測できることがわかった。このような観測は、地下構造の解析や地下電気抵抗の時間的変化の検出に利用できると考えられる。
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