抄録
赤外放射フラックスの測定に広く用いられるEppley社のシリコン製ドーム付赤外放射計 (PIR) について、ドームの射出効果を定量的に調べた。温度を室温から-25°Cまで制御できる黒体錐とドーム温度を変化させるための装置を有する検定用黒体槽を開発し、PIRの測器定数およびドーム係数を求めた。ドームの射出効果をドーム温度を用いて補正することにより、温度上昇・下降時に見られたPIR出力のヒステリシスが消失し、入射放射量対PIR出力の検定回帰直線が精度良く得られることが確かめられた。PIRを用いた下向き赤外放射フラックスの野外測定では、ドーム効果によって、それを無視した場合には晴天大気下の地上観測では20W/m2以上の過大評価、航空機観測では10~20W/m2の過小評価がなされることがわかった。ドーム温度を測定しドーム効果を適正に補正することにより、10W/m2前後の誤差で赤外放射フラックスが測定されることを示す。