Papers in Meteorology and Geophysics
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降水の同位体の研究
三宅 泰雄松葉 谷治西原 千鶴子
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1968 年 19 巻 2 号 p. 243-266

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抄録

雲粒の18O含量は,閉鎖系における方が開放系におけるより大となる。また,平衡よりも非平衡条件下の方が大となる。
前線型の降水のときには,18O含量の時間的変化は開放系モデルを用いての計算にかなりよく一致する。雪をふらせる対流型のシャワーの18Oの変化は,開放型モデルで説明できる。
重い同位体を濃縮する効果は,落下雨滴と水蒸気の間の同位体交換の方が,蒸発よりも大である。落下雨滴と水蒸気の間の同位体交換反応の速度定数を計算した結果,フリードマン(1962)があたえた値の約半分になった、雨水中では計算値より小さい同位体交換量が観測された。
平衡の条件下での降水中のDと18O含量の関係は,近似的に座標原点を通る直線であらわされ,同位体の分離の小さいところでは,直線の傾斜は(αD-1)/(α18O-1)より小さい。直線からのかたよりはカイネティックな過程を考えて説明できる。直線の下へのずれはカイネティックな蒸発により,上方へのずれはカイネティックな条件での原料の供給か,同様の条件下で蒸発した水蒸気と雨滴間の同位体交換による。
Dと18O含量についてクレイグの与えた関係式の定数項は,原料になる水蒸気中の18O含量がD含量に比較して,平均1.2‰ だけ低いことに由来する。

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© 気象庁気象研究所
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