日本きのこ学会誌
Online ISSN : 2432-7069
Print ISSN : 1348-7388
耐塩性プロテアーゼを生産するきのこ類を用いた醤油の製造
本間 裕人徳田 宏晴永嶋 涼太中村 和夫中西 載慶
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2015 年 23 巻 1 号 p. 26-30

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抄録
これまでの研究において高いプロテアーゼ生産性を有することが明らかになっている19株の食用きのこ類を用いて醤油の試醸を行い,得られた醤油の成分分析,官能検査を行った.醤油中の全窒素量を測定したところ,市販醤油が1.50%であるのに対し,ツクツクホウシタケ減塩醤油では1.59%,ヌメリツバタケSKB022減塩醤油では1.42%であった.これら2株はおよそのアミノ酸濃度を示すホルモール窒素濃度もきのこ醤油の中では高く,それぞれ1.15%,0.84%であり,市販醤油の1.17%に近い値であった.還元糖量を測定したところ,市販濃口醤油が24.5g/Lであるのに対し,ヌメリツバタケSKB021減塩醤油では102.5g/L,ヌメリツバタケSKB022普通醤油では89.46g/Lと市販醤油よりも顕著に高い値を示した.よって,還元糖濃度が高いことがきのこ醤油の特徴であると考えられた.また,減塩醤油と普通醤油を比較すると,還元糖濃度が高く官能検査における評価も高いことから普通醤油の方がきのこ醤油の製造には適していると考えられた.さらに,ヌメリツバタケSKB022株は,ホルモール窒素量,全窒素量,還元糖濃度がいずれも高く,官能検査での評価も高いことから,最も醤油醸造に適していると思われた.本研究の普通醤油の製法はこれまでの研究と異なり非殺菌の環境下でも可能なため,今後さらに仕込み条件の検討などを行えば,市販できる可能性も考えられる.
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2015 日本きのこ学会
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