抄録
シュウ酸アルミニウム錯体は,アカマツを宿主とする京都府坂井研究林のマツタケシロのシロ先端部から発見された抗菌物質である.今回,同錯体が地域や宿主に関係なく,マツタケ Tricholoma matsutake シロに存在するか否かを調べることを目的として,アカマツ林である岩手県と長野県,およびトドマツ林である北海道と,ツガ林である長野県の各試験地におけるマツタケシロ土壌の分析を行った.その結果,同錯体は調査した全ての試験地のシロのシロ先端部に存在すること,同錯体濃度が高いと抗菌活性が強く、pHは低くなることが明らかとなった.これらの結果から,シュウ酸アルミニウム錯体は全国のマツタケシロに普遍的に存在し,その抗菌作用により土壌中の微生物環境を制御することによってマツタケシロの維持,拡大に重要な役割を担っていることが示唆された.