抄録
ヒトはマツタケ・シイタケといったキノコ類を積極的に食糧として利用している. ヒト以外でキノコ類を積極的に食糧にする哺乳類はほとんど知られていないが, 屋久島に生息するヤクシマザルはキノコ類を頻繁に採食していることが最近の調査から分かってきている. しかし, キノコ類には哺乳類に対して毒性を示す「毒キノコ」が一定の割合で存在しており, 中には致命的な毒性をもつものも存在している. 従来の研究では, ヤクシマザルが毒キノコを回避した上で採食行動を行っているのかどうかは分かっていなかった. そこで, 2008年9月に京都大学gCOEの屋久島実習において, ヤクシマザルがキノコを採食するにあたって毒キノコを回避できているかどうかを明らかにすることを目的とした調査を行った. 本調査では, まず, 屋久島内に具体的にどういったキノコ類が生育しているかについて調べた. さらに, ヤクシマザルの食べ残したキノコの破片やヤクシマザルの糞からキノコ類からDNA塩基配列情報を解読し, DNAバーコーディングを行うことによって, ヤクシマザルがどういった種類のキノコ類を採食しているかについて調べた. その結果, 屋久島には食用となりうるキノコ類も毒キノコもヤクシマザルの生息する地域にくまなく分布しているが, ヤクシマザルは毒キノコを回避して食用となりうるものを採食している可能性があることが分かった. また, 同所的に生息するヤクシマザルの個体間で採食するキノコ類の種類が大きくことなっていたことから, ヤクシマザルの年齢や群れ内の順位等の個体情報によって採食するキノコ類の種類が異なっている可能性があることが示唆された.