日本菌学会大会講演要旨集
日本菌学会第53回大会
セッションID: A4
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6遺伝子の系統解析における狭義Nectria属菌の分類
*廣岡 裕吏Rossman AmySamuels GaryChaverri Priscila
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抄録

Nectria属菌は, 20属少なくとも200種以上を含むNectria科の基準属であるとともに, 多くの植物病原菌を含むことでも知られている. しかし, 本菌の分類学的研究は, テレオモルフ-アナモルフ関係におけるデータ不足や, Nectria属の定義が幅広いことなどから, 現在狭義Nectria属と呼ばれている. この状況を打開するため, 演者らはこれまでに集めた狭義Nectria属菌を用い, 本菌群の分子系統学的検討を行うこととした. 6遺伝子(ITS, LSU, β-tubulin, EF, ACT, RPB1)を用いた分子系統解析の結果から, 本菌群は大きく2つのクレードに分かれ, それらはアナモルフであるTubercularia属(CL-1)とGyrostroma属, Zythiostroma属(CL-2)によって区別された. CL-1内のN. cinnabarinaは, 4つの系統群の存在が認められた. また, 日本から採集したNectria sp. 1は, 単系統性が支持された. CL-2内では, Gyrostroma属(CL-2-1)とZythiostroma属(CL-2-2)のクレードが形成された. CL-2-1内のN. xanthoxyliは, 2つの系統群の存在が認められた. CL-2-2内のN. cucurbitulaおよびN. aquifoliiは, 2つの系統群の存在が認められた. また, 日本から採集したNectria sp. 2は, 単系統性が支持された. Nectria cinnabarinaNectria属の基準種である. 本研究の結果, 現段階において狭義Nectria属 はN. cinnabarinaTubercularia属をアナモルフに持つ種に制限され, 分生子殻(Gyrostroma属, Zythiostroma属)をアナモルフに持つ種はNectria属菌から取り除く必要が明らかとなった.

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© 2009 日本菌学会
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