抄録
演者は, 1998年12月に奄美大島でArmillariaに属する種を採集し, スリランカから報告されたArmillaria fuscipes Petchと同定した. 日本からは未記録のため, ここに報告する.
Armillaria fuscipes Petch, Ann. R. Bot. Gdns Peradeniya 4: 299 (1909).
和名:アシグロナラタケ(新称).
傘は, 径3-5 cm, 平らなまんじゅう形;表面は, 中心部は褐色, 周辺部に向かって淡褐色から白色, 無毛だが, 中央部は細かい褐色の鱗片でおおわれる;周辺部には条線がある. ひだは, やや垂生, 白色, やや密. 柄は, 3-6 cm×5-8 mm, 細長い, 屈曲し, 円筒形, 中実, 根もとは太まる;表面は, 下部が黒褐色で, 白~灰色の綿毛状の鱗片を被る, 上方に向かってより淡色になり, 上下方向に繊維状の毛がある. 胞子は, 8.5-11.5×5-7 μm, 卵形から長卵形, 無色, 平滑, 薄壁またはやや厚壁. 担子器は29-38×7-9 μm, 棍棒形, 4胞子型. 縁シスチジアは24-36×5.5-8μm, 屈曲した円筒形またはくびれた棍棒形, 無色, 平滑. 子実層托実質は, 不明瞭な両側型. 傘の鱗片は, やや膠着する鎖状の分岐しない褐色厚壁の17-50×8-15 μmの細胞からなる. 腐朽材上.
分布:日本(奄美), スリランカ.
標本:奄美大島宇検村赤土山, 10 Dec.1998, 根田仁, TFM-M-S841; Peradeniya, Kandy Distr., Central Prov., Sri Lanka, Nov. 1908, Petch 2741 (type, K)
本種は, Acacia decurrens Wild,チャ (Camellia sinensis Kuntze)の病原菌としても知られる(Petch 1909, Petch 1923).