日本菌学会大会講演要旨集
日本菌学会第53回大会
セッションID: B17
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スギ林における食用きのこ類の形態学的観察および分子生物学的検討
*原田 栄津子川出 光生松田 陽介伊藤 進一郎
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抄録
近年,スギの木材価格が低迷し採算が取れないことからスギ林の手入れが放棄されることが多い.実際,“緑の砂漠”と表現されるように下草もほとんど生えない林床土壌が剥き出した森林が各地でみられ,森林の持つ公益的機能が十分に発揮されていないことが指摘されている.三重県津市美杉町は9割が森林によって占められ,その約半分がスギ林である.そこで同町は,2008年より荒廃した森林の再生および地域活性化のための特産品開発を目的として,スギ林床を利用したオオイチョウタケ(Leucopaxillus giganteus)の人工栽培化の試みを始めている.この美杉地方では,スギ林に発生するきのこを総称してスギタケと呼び,オオイチョウタケ以外にもカヤタケ属(Clitocybe spp.)のきのこ数種も同様にスギタケと称して昔から好んで食しているが,それらカヤタケ属のきのこは未同定である.さらにこのカヤタケ属のきのこと形態が類似しているハイイロシメジ(C. robusta)は他県で中毒例が数件あり,安全性に関しても未確認であるため,分類学的に整理しておく必要もある.また,一般的にスギに依存して生息するきのこ類がほとんど存在せず,その発生が少ないため,これまでスギ林のきのこ類についての分類学的な基礎研究はほとんど行われていない.  そこで本研究では,三重県美杉町でスギタケと称される3種の食用きのこ(オオイチョウタケおよびカヤタケ属2種)の分類学的な位置づけを明らかにするため,形態学的,分子生物学的な特徴を比較検討した.形態観察に供したオオイチョウタケおよびカヤタケ属2種の子実体は三重県津市美杉町で採取した.また,DNA解析には,採取した子実体をPDA寒天培地上に組織分離し,純粋培養した菌糸体を用いた.現在,光学顕微鏡下における形態観察,およびrDNA ITS領域の塩基配列データの解析を行っている.
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© 2009 日本菌学会
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