日本菌学会大会講演要旨集
日本菌学会第53回大会
セッションID: B33
会議情報

小笠原諸島父島土壌より分離された糸状菌について
*野中 健一増間 碌郎大村 智
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
 海洋島とは現在に至るまで一度も陸と繋がった事がない大洋上の島である。その為、海洋島には、人為的に持ち込まれた生物を除いては風に乗って分散できる生物、自力で飛翔移動ができる生物、海流によって漂着した生物だけが生息・生育している。これらの生物が大陸と隔離されたまま独自の進化を遂げてきているため、固有の生物相がみられる。沖縄本島とほぼ同緯度に位置する小笠原諸島では、陸上植物の約4割、陸鳥のほぼ全て、陸産貝類の約4分の3が小笠原諸島の固有種であり、動植物合わせて500種以上が小笠原固有となっている。この事から、菌類相も日本本土とは異なっていると考えられた為、土壌糸状菌の分離・調査を行う事とした。  小笠原諸島父島に生息する5種の固有植物の根元より各1サンプルずつ土壌を採取した。これらをpHの異なる9種類の培地を用いて希釈平板法にて分離を行った。コロニーの性状に基づいて選択した結果、322株を選択した。これらを分生子の形状およびITS領域の塩基配列に基づいて同定を試みた結果、254株について属を推定する事が出来、34属に及んだ。この内訳としてPenicillium属が最も多く、次にTrichoderma属、Pochonia属と続いた。特に本土からの分離例が少ないPochonia属が多く分離された事に興味が持たれた。また、分離数は少ないもののMariannaea属、Mallochia属、Chaunopycnis属、Sagenomella属など分離報告例が少ない属も含まれていた。属の推定に至らなかった残りの68株の多くはNCBI BLAST検索結果で最も相同性が高かった値が80%台であったことからも未記載種や珍しい種が多く含まれている事が推測された。  現在、これら分離株の培養液について各種評価系でアッセイを行っており、新規生物活性物質が発見される事を期待している。
著者関連情報
© 2009 日本菌学会
前の記事 次の記事
feedback
Top