日本菌学会大会講演要旨集
日本菌学会第53回大会
セッションID: C19
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北海道の天然林における多孔菌類の多様性と粗大有機物量との関係
*山口 岳広飯田 滋生倉本 惠生松井 哲哉飯島 勇人石橋 聡鷹尾 元高橋 正義佐々木 尚三酒井 佳美阿部 真
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抄録

 多くの木材腐朽菌類, 特に多孔菌類は森林内の倒木や根株・落枝などの粗大有機物(Coarse Woody Debris :CWD)を基質として利用するため, 天然林での択伐施業などの人為的撹乱は, 林内のCWDの質や量の変化を通じて腐朽菌類の多様性に大きな影響を及ぼすと考えられる. そこで, 北海道におけるエゾマツ・トドマツを主とした天然林(針広混交林・亜寒帯性針葉樹林)において, CWDと多孔菌類の多様性の関係を明らかにするため調査を行なった. 北海道内の11箇所の針広混交天然林に1haの区画を設定し, 9月~10月に区画内に発生した多孔菌類(主にヒダナシタケ目サルノコシカケ科, マンネンタケ科, タバコウロコタケ科)の子実体の種数と総発生数を記録した. CWDの材積量は, 各調査地内の0.2~0.5haの区画内で元口直径10cm以上の倒木や根株・落枝の両端の直径と長さを測定して求積し, ha当たり材積量に換算した. 調査の結果, 各調査地で多孔菌類は11~31種が確認され, 総出現数は43~292であった. またCWDの材積量は21~241m3・ha-1と大きな開きがあった. 多孔菌類の出現種数・総出現数はCWD材積量の増大に従って大きくなる傾向が明らかであったが, 高標高地で亜寒帯針葉樹天然林に属する調査地では, 針広混交林でのCWD量に比べて出現種数・総出現数は低い傾向があり, 森林タイプにより傾向が違うことが示唆された. CWD材積量の増加に伴い各種の多様度指数も大きくなる傾向が見られ, 林内のCWD材積量は多孔菌の菌類相と多様性に影響を与えていることが示唆された.

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© 2009 日本菌学会
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