抄録
液体の統計力学に基づいた理論である3D-RISM理論は,これまでにも多くのタンパク質の分子認識機構に適応され,成功例をあげてきた.これは,3D-RISM理論によって生体中における環境,すなわち溶媒となる水を統計力学的に取り込むことができ,その上で認識される分子の分布関数を得ることができたためである.分布関数で分子認識機構を議論することの利点は,明示的な原子モデルを使ったドッキングとは異なり,配置の統計性が保証されている点にある.しかしながら,これまでの3D-RISM理論では,リガンド分子が大きくなると方程式の要請により解くべき変数が増大し,計算が困難になるという難点あった.この問題は近年,uu- 3D-RISM法として解決された.本稿では,このuu- 3D-RISM法を用いた成功例として,創薬分野でのモデル系の一つとされているホスホリパーゼA2-アスピリン系に適応した結果を解説する.