微粒子のランダムな運動であるブラウン運動の拡散性は,溶媒の粘性や粒子の形状などで決まる物質の静的な性質である.近年,その拡散性が時間的に大きく変化することがわかり,その揺らぎに注目が集まっている.本稿では,拡散係数が時間的に変化するランジュバン方程式において,単一の軌道から計算された平均2乗変位の揺らぎの理論を紹介する.この理論を用いると,1 分子の軌道から任意の時刻での拡散性を精密に見積もることができる.この手法を応用することにより,過冷却液体における拡散状態の遷移やガラス転移点近傍での緩和時間の異常性を明らかにする.