アンサンブル
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最近の研究から
結晶性高分子のラメラ構造とメルト構造を区別する局所秩序変数
髙野 芙巳生平塚 将起高橋 和義
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2022 年 24 巻 4 号 p. 225-233

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抄録

紫外線や海流によって細かくなった結晶性高分子はマイクロプラスチックと呼ばれている.その主要な構成要素は結晶性の高いラメラ構造であると考えられている.そのため,ラメラ構造の分解過程の解明はマイクロプラスチック分解技術の発展につながる.しかし,秩序化したラメラ構造が単純な温度変化によって融解する過程の詳細は未だ解明されていない.そこで,分子動力学(Molecular Dynamics: MD)シミュレーションを用いてラメラ構造が融解してメルト構造に転移する過程をミクロスケールで追跡した.しかし,MD の結果のみでは融解過程を精密に描画することは難しい.構造の変化を解析するためには,ラメラ構造とメルト構造を区別する定量的な指標が必要である.局所秩序変数(Local Order parameter: LOP)は構造の秩序化の度合いを定量化できる指標であり,異なる構造を区別するためによく用いられる.本研究では,教師あり機械学習を用いて,ラメラ構造とメルト構造を分類できる最適なLOP を自動的に探索した.このLOP を用いて融解過程の解析を行った.その結果,ラメラ構造に含まれる結晶部と非晶部の隙間から融解が開始するミクロな現象を可視化することに成功した.

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© 2022 分子シミュレーション学会
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