抄録
食品汚染マイコトキシンは,食品とともに摂取され消化管より吸収されたのちその毒性が発現されるため,これらマイコトキシンの腸管での吸収,代謝および毒性などは,標的細胞への毒性発現に大きな影響を及ぼしていると考えられるがこの分野の研究はほとんどなされていない.フザリウムマイコトキシンは,近年免疫担当細胞に対する毒性が注目されていることから,ヒトモデル系としてヒト腸管細胞およびヒト免疫細胞とのコカルチャー法を確立し,その毒性の解析を試みた.ポリカーボネート膜上にヒト腸管細胞を培養し,その基底膜側にリンパ球を培養する装置を用い粘膜側から吸収されたマイコトキシンのリンパ球への毒性をサイトカインの産生を指標に検討を行った.その結果1)腸管細胞はフザリウムマイコトキシンの曝露によってIL-8を産生すること,2)リンパ球はフザリウムマイコトキシンの曝露によってTNF-alphaを産生すること,3)リンパ球は腸管を経由したフザリウムマイコトキシンによってIL-10の産生を昂進させることがわかった.この培養法を用いることにより,今までの単一細胞を用いるin vitro試験法では解明できなかった毒性機序において有益な知見が得られることが期待できる.