抄録
アフラトキシンB1は最も強力な発癌物質の一つであり, 様々な実験動物に肝癌を誘発することが知られている. 以前, アフラトキシンB1誘導ラット肝癌K2細胞では14-3-3 βとc-myc mRNAが過剰発現し, それらがK2細胞のin vivoとin vitroの増殖に重要であることを報告した. しかし, アフラトキシンB1はゲノムに多くの異常を引き起こすので, 他の遺伝子もアフラトキシンB1による肝発癌に関与している可能性が考えられた. 今回, アフラトキシンB1誘導の肝発癌に関与している可能性が高い遺伝子としてラットNC33 (nuclear coiled-coil protein 33 kDa) を報告する. NC33の発現は正常なラット肝臓に比べ, K2細胞で非常に高かった. さらに, in vitroでの癌細胞の特性として知られる軟寒天中でのコロニー形成能はNC33の発現をアンチセンスRNAの強制発現によって低下させると減少した. これらの結果より, NC33の過剰発現はアフラトキシンB1による肝発癌に強く関わっていることが示唆された.