抄録
アフラトキシンは, 天然物中で最も発ガン性の強い化合物であるが, そのメカニズムについてはアフラトキシンB1を用いて分子細胞学レベルまで研究されている. 本報告では2002年に発刊したIARCのモノグラフに基づいてアフラトキシンB1の発ガンメカニズムを中心に紹介した. また, わが国では現在アフラトキシンB1に関しては規制を設けているが, この規制を超える違反例の状況を検疫所のモニタリングシステムの結果から紹介するとともに, 最も違反例の多いナッツ類に焦点をあて, その輸入時検査での検出率からわが国のアフラトキシン汚染の現状について考察を行った. その結果, 現在の状況ではナッツ類におけるアフラトキシンの検出頻度および濃度も低いことから, アフラトキシン汚染による肝臓がん発症リスクは極めて低水準であることが明らかとなったが, この水準を保つにはより一層のモニタリングの強化と適切な基準値設定が必要であると思われた.