2018 年 68 巻 1 号 p. 7-11
食菌性昆虫は食品への混入やカビ汚染を引き起こすことがあるため,食品の安全管理上,施設内における害虫防除の対象として重要視されている.本研究では,千葉県の一般施設で捕獲した食菌性昆虫であるヒメマキムシから分離されたカビの種類を調査し,そのマイコトキシン産生能を確認した.18個体の虫体から分離された780コロニーの種類分布は,Penicillium属90.1%,Aspergillus属7.7%,Cladosporium属1.0%,その他のカビ1.2%となり,Penicillium属とAspergillus属が大部分を占めた.その割合は昆虫の棲息環境カビ種の割合と同様であった.さらに,形態的特徴からPenicillium属を8グループ,Aspergillus属6グループに分け,各グループから無作為に1-4株を選抜した.選択された菌株について,分子生物学的解析により菌種の推定を行い,2種類の培養液,2温度帯を用いて培養したのち,LC-QTOFMSによりマイコトキシンの定性的スクリーニングを行った.その結果,Aspergillus属5株はシクロピアゾン酸あるいはステリグマトシスチンを産生していたが,Penicillium属では本研究でスクリーニング対象としたマイコトキシンの産生能は認められなかった.これらの結果から,ヒメマキムシの保有カビはPenicillium属とAspergillus属が大部分を占めており,その中にマイコトキシン産生菌も含まれることが明らかになり,食品混入だけでなくマイコトキシン汚染を増大させるハザードとなりうることが示唆された.