マイコトキシン
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68 巻, 1 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
Part I (Papers in English)
Mini Review
  • Jung-Eun Kim, Hokyoung Son, Yin-Won Lee
    2018 年 68 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2018/01/31
    公開日: 2018/02/27
    ジャーナル フリー

     ゼアラレノン(ZEA)は,エストロゲン作用を有するポリケタイド由来のマイコトキシンであり,数種のフザリウム属菌により産生される.ZEAは,F. graminearumに感染した穀物にしばしば蓄積し,人畜に危害を及ぼす.ZEAの生合成経路に関する遺伝子情報はフォワードおよびリバースジェネティクスにより解明されている.2つのポリケタイド合成酵素(PKS)遺伝子を含めて4つの遺伝子がZEA生合成遺伝子クラスター内に存在している.この2つのPKS遺伝子に加え,ZEB1ZEB2はそれぞれイソアミルアルコール酸化酵素とbZIP DNA結合部位を持つ転写活性因子をコードする遺伝子である.ZEB2は,1つのプロモーターを介して2つのアイソフォーム(ZEB2LとZEB2S)を産生する.ZEB2LとZEB2Sは相互作用し,それぞれZEA生合成の際のZEB2の自己発現制御において正または負の因子としてかかわっている.F. graminearumにおけるcAMP依存性プロテインキナーゼA(PKA)経路の触媒ならびに制御サブユニットである,CPK1とPKRは,ZEAの生合成を抑制する.特に,PKA経路は,ZEAの産生において,ZEB2Lを転写及び転写後の段階で制御していることが分かった.これらの知見は,F. graminearumにおけるZEA生合成の基本的な制御メカニズムの理解を深めるものである.

Note
  • 吉浪 誠, 小林 直樹, 滝埜 昌彦, 小西 良子
    2018 年 68 巻 1 号 p. 7-11
    発行日: 2018/01/31
    公開日: 2018/02/27
    ジャーナル フリー

     食菌性昆虫は食品への混入やカビ汚染を引き起こすことがあるため,食品の安全管理上,施設内における害虫防除の対象として重要視されている.本研究では,千葉県の一般施設で捕獲した食菌性昆虫であるヒメマキムシから分離されたカビの種類を調査し,そのマイコトキシン産生能を確認した.18個体の虫体から分離された780コロニーの種類分布は,Penicillium属90.1%,Aspergillus属7.7%,Cladosporium属1.0%,その他のカビ1.2%となり,Penicillium属とAspergillus属が大部分を占めた.その割合は昆虫の棲息環境カビ種の割合と同様であった.さらに,形態的特徴からPenicillium属を8グループ,Aspergillus属6グループに分け,各グループから無作為に1-4株を選抜した.選択された菌株について,分子生物学的解析により菌種の推定を行い,2種類の培養液,2温度帯を用いて培養したのち,LC-QTOFMSによりマイコトキシンの定性的スクリーニングを行った.その結果,Aspergillus属5株はシクロピアゾン酸あるいはステリグマトシスチンを産生していたが,Penicillium属では本研究でスクリーニング対象としたマイコトキシンの産生能は認められなかった.これらの結果から,ヒメマキムシの保有カビはPenicillium属とAspergillus属が大部分を占めており,その中にマイコトキシン産生菌も含まれることが明らかになり,食品混入だけでなくマイコトキシン汚染を増大させるハザードとなりうることが示唆された.

  • 久城 真代, 畑林 秀美, 中川 博之, 矢部 希見子
    2018 年 68 巻 1 号 p. 13-18
    発行日: 2018/01/31
    公開日: 2018/02/27
    ジャーナル フリー

     ジクロルボス-アンモニア(DV-AM)法は,目視の赤(陽性)白(陰性)判定によるアフラトキシン産生菌コロニーの高感度検出法である.本研究では,DV-AM法を用いて,沖縄のさとうきび圃場からアフラトキシン産生菌の分離を試みた.初回のスクリーニングで土壌25サンプル中1サンプルから6株の陽性株が分離できた.それらは化学分析により,BタイプだけでなくGタイプのアフラトキシンを産生することが確認できた.6株中2株(OKI-12,OKI-16)について形態学的ならびに分子系統学的解析を行ったところ,これらはAspergillus nomius cladeに属するAspergillus pseudonomiusであることが示された.以上より,DV-AM法は,マイナーなアフラトキシン産生菌の分離にも適していることが証明された.

  • 井上 信宏, 若菜 大悟, 武田 尚, 矢口 貴志, 細江 智夫
    2018 年 68 巻 1 号 p. 19-25
    発行日: 2018/01/31
    公開日: 2018/02/27
    ジャーナル フリー

     漢方薬が真菌の二次代謝産物産生能に与える影響を調べるため,漢方薬添加培地でEmericella nidulans IFM 60678を培養した結果,芍薬甘草湯を含む十数種類の漢方薬でsterigmatocystin(ST)が産生された.また,芍薬甘草湯の構成生薬である芍薬エキスがST誘導能を示すことを明らかとした.次に,非ST産生E. nidulansおよびAspergillus flavus菌株に対する芍薬エキスの作用について検討し,その作用がE. nidulansのみに有効である可能性を見出した.さらに他の生薬についてE. nidulansに対するST誘導能を検討した結果,芍薬以外の生薬もE. nidulansのST産生を誘導する作用があることが,明らかとなった.我々はこのユニークでシンプルな方法が,新規天然物の発見やマイコトキシンの産生制御に繋がると考えている.

Letter
パート II(日本語論文)
学術賞受賞総説
ISMYCO 2016 プロシーディング
  • 宮﨑 茂
    2018 年 68 巻 1 号 p. 41-48
    発行日: 2018/01/31
    公開日: 2018/02/27
    ジャーナル フリー

     食品安全委員会は,食品安全基本法に基づいて内閣府に設置されているリスク評価機関で,食品の安全性確保に関する規制や指導を行うリスク管理機関とは独立して,科学的知見に基づいて食品の安全性に係るリスク評価を行っている.食品安全委員会には12の専門調査会が設置されて審議を行っており,食品を汚染する可能性のあるマイコトキシン(かび毒)のリスク評価は,かび毒・自然毒等専門調査会で行われている.本稿では,ISMYCO 2016での講演を基に,食品安全委員会の組織体制,リスク評価の流れ及びかび毒・自然毒等専門調査会でのかび毒のリスク評価結果について概説した.

80th JSMYCO プロシーディング
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