2012 年 101 巻 7 号 p. 1986-1993
骨髄異形成症候群(MDS)などの難治性貧血では頻回の輸血が必要になり,鉄過剰症をきたすことが多い.過剰鉄は活性酸素種の産生を介して臓器障害を引き起こすとされ,特に低リスクMDSでは予後に悪影響を与えることが示唆されている.輸血後鉄過剰症では鉄キレート剤による治療が行われるが,有効な鉄キレート療法は単なる臓器障害の改善にとどまらず,低リスクMDS患者において生存期間を延長することが分かってきた.そして興味深いことに,鉄キレート剤の投与後に血球数の改善が認められる症例があることも分かり,最近注目を集めている.本稿では輸血後鉄過剰症についてその病態と治療効果について概説する.