日本内科学会雑誌
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II.二次性心筋症を見逃さない
5.心筋緻密化障害
市田 蕗子
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2014 年 103 巻 2 号 p. 327-335

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抄録

心筋緻密化障害は,心室壁の過剰な網目状の肉柱形成と深い間隙を形態的特徴とする新しい心筋症で,最近のAHA(American Heart Association)分類では,遺伝的要素の強いprimary cardiomyopathyの一つとして分類されている.典型例は,新生児期に心不全のため死亡し,心移植の対象になっている疾患であるが,近年,年長児や成人の報告例も多く,新たに注目されている疾患である.高率に家族性が見られ,遺伝的多様性があり,G4.5, LDBC,サルコメア遺伝子などの多数の遺伝子異常が報告されている.新生児期から成人まで発症時期は幅広く,その臨床像が多彩であるため,容易に見逃されやすい.心不全を呈した症例や,学校心臓検診で心電図異常や不整脈を指摘された場合には,心エコーによる心尖部までの十分な観察が重要である.経過とともに心機能低下は進行し,致死的不整脈や塞栓症の合併も多く,長期予後は不良の疾患で,心移植の対象となる疾患であり,早期発見により治療計画を立てることが重要である.成人では,二次的な心筋障害のremodelingの過程で,肉柱形成が見られることがあり,over diagnosisされている可能性がある.そのため,今後,診断基準の見直しと,統一した診断基準の立案が求められる.

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© 2014 一般社団法人 日本内科学会
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