日本内科学会雑誌
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103 巻, 2 号
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内科学会NEWS
目次
特集 心筋症:診断と治療の進歩
Editorial
トピックス
I.心筋症の病因に基づいた新しい分類
  • 筒井 裕之
    2014 年 103 巻 2 号 p. 277-284
    発行日: 2014/02/10
    公開日: 2015/02/10
    ジャーナル フリー
    1957年に初めて「心筋症」という呼称が使用されて以来,心筋症の定義・分類が行われてきた.心筋症は,「高血圧や冠動脈疾患などの明らかな原因を有さず,心筋に病変の首座がある一連の疾患」と定義される.基本的には,形態・機能的異常をもとに分類されるが,画像診断や遺伝子解析の進歩によって,心筋症の病因に関する理解が深まったが,日米欧で分類に関する見解が一定していないのが現状である.
  • 森田 啓行
    2014 年 103 巻 2 号 p. 285-292
    発行日: 2014/02/10
    公開日: 2015/02/10
    ジャーナル フリー
    心筋症が遺伝性疾患であることは広く知られている.遺伝子解析研究が成果をあげてきたにもかかわらず,心筋症診療において遺伝子診断がおこなわれているのはごく一部の症例に過ぎない.遺伝子解析研究の成果を正しく理解することは病態生理を深く知ることにつながる.また,診療における遺伝子診断の有用性を正しく判断することにもつながる.特に,次世代シークエンサーにより膨大な遺伝子解析データが得られるようになり,解析結果の解釈にはより高度な遺伝子の知識が必要とされる.本稿では,遺伝子の視点から心筋症を概観する.
II.二次性心筋症を見逃さない
  • 久保 亨
    2014 年 103 巻 2 号 p. 293-298
    発行日: 2014/02/10
    公開日: 2015/02/10
    ジャーナル フリー
    Fabry病は,α-galactosidase A活性の欠損・低下によってひき起こされるX連鎖性遺伝のライソゾーム病であり,腎不全・心不全・脳血管障害にて中年期以降に死亡する進行性の疾患である.心病変では肥大型心筋症様の肥大を呈し拡張障害を認め,さらに進行すると収縮不全によって難治性心不全をきたすことが知られている.従来までの対症療法に代わり,本邦でも2004年から根本治療である酵素補充療法が可能となり,臨床の場において本疾患を認識し鑑別することは重要と考えられる.
  • 手塚 大介, 磯部 光章
    2014 年 103 巻 2 号 p. 299-308
    発行日: 2014/02/10
    公開日: 2015/02/10
    ジャーナル フリー
    サルコイドーシスの診断ガイドラインには2006年に策定された日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会によるものと厚生労働省の特定疾患の呼吸器系疾患調査研究班(びまん性肺疾患)の策定した認定基準とある.心内膜下生検や血液バイオマーカー,画像診断により診断するが,最近FDG-PET,心臓MRIの有用性が報告されている.また新しい疾患概念として孤発性心サルコイドーシス症が注目されている.治療は薬物療法としてはステロイドが主であり,ペースメーカー療法やICD(implantable cardioverter defibrillator)などデバイス治療も行われる.
  • 吉川 勉
    2014 年 103 巻 2 号 p. 309-315
    発行日: 2014/02/10
    公開日: 2015/02/10
    ジャーナル フリー
    たこつぼ型心筋症は一過性の特徴的な心機能障害を呈する新しい概念の心筋症である.心電図ではST上昇,T波陰転化,QT延長などを呈し,急性冠症候群との鑑別が重要となる.院内死亡は急性冠症候群と同程度であるが,背景となる疾患に大きく影響される.急性期に,致死的心室性不整脈,ポンプ失調,心破裂,全身塞栓症など多彩な心合併症を呈する.その発生機序はいまだ不明であるが,交感神経機能亢進が最も有力である.急性期治療の確立,心合併症の予測,再発の予防などが今後の課題である.
  • 野上 昭彦
    2014 年 103 巻 2 号 p. 316-326
    発行日: 2014/02/10
    公開日: 2015/02/10
    ジャーナル フリー
    不整脈原性右室心筋症(arrhythmogenic right ventricular cardiomyopathy:ARVC)は右室の拡大と機能低下,および右室起源の心室性不整脈を特徴とする心筋症である.遺伝的要因があり,心筋細胞間の接着に関与するデスモゾーム関連遺伝子の異常などが明らかになっている.2010年には初期病変や保因者への診断感度を高くした新たな診断基準が示された.本疾患は若年者の突然死の原因となることもあるため,早期診断と心室性不整脈と心不全に対する適切な治療が重要である.
  • 市田 蕗子
    2014 年 103 巻 2 号 p. 327-335
    発行日: 2014/02/10
    公開日: 2015/02/10
    ジャーナル フリー
    心筋緻密化障害は,心室壁の過剰な網目状の肉柱形成と深い間隙を形態的特徴とする新しい心筋症で,最近のAHA(American Heart Association)分類では,遺伝的要素の強いprimary cardiomyopathyの一つとして分類されている.典型例は,新生児期に心不全のため死亡し,心移植の対象になっている疾患であるが,近年,年長児や成人の報告例も多く,新たに注目されている疾患である.高率に家族性が見られ,遺伝的多様性があり,G4.5, LDBC,サルコメア遺伝子などの多数の遺伝子異常が報告されている.新生児期から成人まで発症時期は幅広く,その臨床像が多彩であるため,容易に見逃されやすい.心不全を呈した症例や,学校心臓検診で心電図異常や不整脈を指摘された場合には,心エコーによる心尖部までの十分な観察が重要である.経過とともに心機能低下は進行し,致死的不整脈や塞栓症の合併も多く,長期予後は不良の疾患で,心移植の対象となる疾患であり,早期発見により治療計画を立てることが重要である.成人では,二次的な心筋障害のremodelingの過程で,肉柱形成が見られることがあり,over diagnosisされている可能性がある.そのため,今後,診断基準の見直しと,統一した診断基準の立案が求められる.
III.治療法の選択に結び付く診断法
  • 坂本 信雄, 義久 精臣, 竹石 恭知
    2014 年 103 巻 2 号 p. 336-344
    発行日: 2014/02/10
    公開日: 2015/02/10
    ジャーナル フリー
    各種画像検査や遺伝子検査の進歩した現在においても,病歴の聴取と臨床症状・身体所見の観察は重要である.心筋症の診療においても同様であり,丁寧な病歴聴取と臨床症状・身体所見の把握は,診断や鑑別だけでなく重症度評価や治療法選択にとって重要な手掛かりとなる.心筋症の特徴を理解し,心臓のみならず全身の異常な理学所見を早期にとらえる幅広い知識を有することが,心筋症診療を行うためには必要である.
  • 尾上 健児, 中野 知哉, 斎藤 能彦
    2014 年 103 巻 2 号 p. 345-352
    発行日: 2014/02/10
    公開日: 2015/02/10
    ジャーナル フリー
    心筋症を始めとする心不全で,その診断,リスク層別化,予後予測に有用なバイオマーカーが数十種提唱されている.本編ではそれらを“炎症”“酸化ストレス”“細胞外マトリックス”“神経ホルモン”“心筋傷害”“心筋ストレス”その他のカテゴリーに分け解説する.これら既存のもの,および今後も見出されるであろうバイオマーカーと,画像,病理所見等とをより良く組み合わせることにより,実臨床にさらに寄与することが期待される.
  • 坂田 好美
    2014 年 103 巻 2 号 p. 353-367
    発行日: 2014/02/10
    公開日: 2015/02/10
    ジャーナル フリー
    心エコー検査は,形態的評価,収縮能および拡張能の心機能評価,Doppler心エコーによる血流評価により,心筋症の診断,心機能障害の重症度評価,血栓・心嚢液などの合併の有無,僧帽弁逆流や左室流出路狭窄の評価が可能である.また,組織Doppler心エコー法やspeckle tracking法を用いてdyssynchronyの評価も可能であり,拡張型心筋症の心室再同期療法(cardiac resynchronization therapy:CRT)前後のdyssynchronyの改善効果判定も可能である.すなわち,心エコーは心筋症の診療において,診断から,重症度評価,治療法の選択,治療の効果判定まで,評価可能な検査法である.
  • 宇野 美緒, 石田 正樹, 佐久間 肇
    2014 年 103 巻 2 号 p. 368-377
    発行日: 2014/02/10
    公開日: 2015/02/10
    ジャーナル フリー
    心臓MRI(magnetic resonance imaging)や心臓核医学などの画像診断検査は心筋線維化や交感神経機能などCT(computed tomography)やエコーでは得られない情報を提示し,心筋症の診断,治療方針決定と予後予測において重要な役割を果たしている.本稿では,心筋症の評価に用いられる画像診断法について心臓MRIを中心に解説する.
IV.予後・QOLの改善を目指す治療法の選択
  • 小幡 裕明, 南野 徹
    2014 年 103 巻 2 号 p. 378-386
    発行日: 2014/02/10
    公開日: 2015/02/10
    ジャーナル フリー
    心筋症の薬物治療の考え方としては,原因や関連する病態が明らかである場合はその治療が基本となるが,心筋症として病態が完成した場合は,いわゆる“慢性心不全”に対する一般的な治療概念があてはまる.しかし一方で,肥大型心筋症のように,心室の拡張機能障害や左室流出路狭窄に対する特異的な薬物治療を要する場合も存在する.本稿では,我が国のガイドラインをもとに薬剤治療についての概説を行う.
  • 岡村 英夫, 草野 研吾
    2014 年 103 巻 2 号 p. 387-392
    発行日: 2014/02/10
    公開日: 2015/02/10
    ジャーナル フリー
    約10年前に登場した心臓再同期療法(cardiac resynchronization therapy:CRT)は慢性心不全患者のQOLの改善のみならず,生命予後をも改善する治療法として発展し,今では慢性心不全治療のひとつの柱となった.さらに,より早期の心不全例におけるCRTの有効性も示され,その適応は拡大しつつある.一方で治療不応性の症例や,左室ペーシングリード留置部位の制約などの課題も残る.
  • 坂田 泰史
    2014 年 103 巻 2 号 p. 393-398
    発行日: 2014/02/10
    公開日: 2015/02/10
    ジャーナル フリー
    心筋細胞や心筋組織障害が高度かつ広範囲にわたる症例に対し,心臓ポンプ機能の長期的な代行を行うために,補助人工心臓を使用する.現在日本では,合併症の少ない植込み型補助人工心臓を使用することが多い.しかし,使用は原則的に移植適応症例に限られる.全身状態が良好な時に装着することが望ましく,装着の判断は決して容易ではないことを銘記すべきである.また,心機能改善を示した症例では離脱も考慮することになる.
  • 西垣 和彦
    2014 年 103 巻 2 号 p. 399-407
    発行日: 2014/02/10
    公開日: 2015/02/10
    ジャーナル フリー
    2010年7月より国際標準に準拠した改正臓器移植法が施行され,“脳死は一般的に人の死”とした上での推定同意が可能となり,15歳未満の臓器提供も可能になった.施行後,ドナーの増加により心臓移植数は増加したが,現在年間約30例程度で頭打ちである.わが国の心臓移植患者の予後は世界に比し極めて良好である.重症心不全に対する標準的治療となるようドナー判定施設の充実・拡大やドナー家族への心のケア体制の確立などが急務である.
座談会
MCQ
今月の症例
医学と医療の最前線
  • 小松 則夫
    2014 年 103 巻 2 号 p. 440-449
    発行日: 2014/02/10
    公開日: 2015/02/10
    ジャーナル フリー
    JAK2チロシンキナーゼ(以下JAK2)はエリスロポエチンやトロンボポエチンなどのサイトカインと受容体との結合によって活性化され,細胞内シグナル伝達に中心的役割を担う重要な分子である.2005年に真性赤血球増加症,本態性血小板血症,原発性骨髄線維症の3疾患に共通してみられるJAK2遺伝子変異が発見されたこれが恒常活性型のJAK2V617F変異である.その後もJAK2 exon12変異やc-MPL変異が次々と発見され,これらの3疾患が腫瘍性であることが再認識されるに至り,2008年に発表されたWHO分類第4版では骨髄増殖性疾患から骨髄増殖性腫瘍に名称が変更された.JAK2阻害薬がすでに開発され,骨髄線維症に対する効果として脾腫の縮小や全身症状・QOLの改善,さらには生存期間の延長や骨髄線維化の改善を認めている.本邦においても現在臨床試験が進行中である.DNAやヒストンの修飾に関与する分子の遺伝子変異も数多く報告され,メチル化阻害薬やヒストンアセチル化阻害薬なども臨床試験が行われ,欧米ではすでにJAK2阻害薬との併用も検討されている.
専門医部会
専門医部会近畿支部教育セミナー
シリーズ:日本発臨床研究の紹介と反省点を語る
シリーズ:指導医のために:医学・医療の多様性を追求する
シリーズ:内科医と災害医療
シリーズ:患者の言葉・身体所見を読み解く
内科学会からのお知らせ
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