2015 年 104 巻 4 号 p. 782-787
麻疹ウイルスは感染力が強く,わずかな感受性者を見つけて感染伝播する.我が国では国をあげた麻疹排除への取り組みが奏功し,患者報告数も減少傾向であり,日本国内の土着株である遺伝子型D5は2010年5月を最後に検出されなくなった.しかし,海外で感染した輸入例を発端とした小規模のアウトブレイクの報告はいまだにあり,医療機関を受診した麻疹患者から,医療関係者や周りの患者へ感染が伝播した報告も見られる.麻疹には有効なワクチンが存在するが,特異的な治療法はなく,感染が拡大してしまってから対処できることは限定的である.麻疹の感染対策には,感染が発覚してから対処するよりも,麻疹の特徴を知ったうえで,平時から備えておくことが重要である.