過去20年ほどの間に,諸外国では様々な医療制度改革が相次いで実施されてきており,家庭医が「プライマリ・ケア(primary care:PC)の専門医」であることが明確になってきた.家庭医としてのユニークな一揃いのコアコンピテンシーと改革の方向性は諸外国でほぼ共通しているが,医療制度とそこでの家庭医の役割は,各国の歴史・文化的背景に応じて多様な発展を続けている.改革を模索する米国の事情に続き,プライマリ・ケアの整備が進んだ主要国(英国,オランダ,オーストラリア,カナダ,デンマーク,ニュージーランド)で取り組まれているプライマリ・ケア重視の医療改革について,家庭医療の構造,ネットワーク化,IT化,質と安全,課題について概説する.家庭医とは何かについては,世界の家庭医のスタンダードになっているWONCA Europeの多軸構造の定義を紹介する.広い範囲の臨床分野の問題に断片的に対応する低いレベルの総合性ではなく,全ての臨床分野の問題解決に駆使される重層的な総合性が日本にも必要である.