日本内科学会雑誌
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ノリの多食により生じた柑皮症の1例
谷川 久一瀬田 勝雄町井 彰伊藤 進
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1961 年 50 巻 5 号 p. 414-419

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抄録
28才女子例.数カ月にわたりノリを1~2帖毎日食べていたところ,重症の柑皮症となつた.血清ビリルビンその他の肝機能は正常なるも,血清カロチン448γ/dlと上昇し,ノリ中に含まれるカロチンによる柑皮症と診断す.柑皮症の発来は,カロチンを含む食品の多食といつた外因のみならず,個体側の内因も重要と考える.多汗体質,甲状腺機能低下などは,同症の発来を助けるもので,同患者にも自律神経失調によると思われる多汗体質および甲状腺機能低下おあつたのは興味深い.本症の皮膚黄染のメカニズムは,組織学的検討から,いつたん汗とともに出たカロチンが外から体表を染めるものと思われる.肝生検によりカロチンと同定し得た顆粒が肝細胞内,特にその周辺部に多くみられ,電子顕微鏡でみるとこの顆粒は滑面小胞体とゴルジー体と形態学上密接に関連していると思われる所見であつた.
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