日本内科学会雑誌
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Bartter症候群の1症例とその病因にかんする考察
佐々木 悠比嘉 和夫浅野 喬平橋 高賢奥村 恂川崎 晃一江藤 胤尚小野山 薫竹林 茂夫
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1977 年 66 巻 2 号 p. 193-204

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抄録

28才,男子のBartter症候群の1例を経験し,体液量変化による血漿レニン活性(PRA),血漿アルドステロン濃度(PAC)変動,外因性angiotensin II (A. II), norepinephrineに対する昇圧反応の変化,またA. II特異的拮抗剤である[Sar1〓, Ile6〓]A. II静注による血圧, PRA, PACの変化を観察した.常食時高値を示したPRA (830ng/m1/18h), PAC (15.8ng/d1)は立位負荷,減塩食下でさらに増加を示し,高塩食摂取,生理的食塩水,アルブミン点滴等による体液量増加の条件下で,ともにある程度の低下と,同時に外因性A. IIおよびnorepinephrineに対する昇圧反応の改善傾向を認めた.また[Sar1〓, Ile8〓]A. II (500ng/kg/min)静注により明らかな降圧現象を認め,同拮抗剤静注前後でPRAは増加, PACは減少を示した.他方,幼少時より塩分渇望を認め,低Na,低C1血症の存在, Na摂取制限により尿中Naは負の平衡を認めた.また腎尿細管におけるビタミンD3 (25-OH-D3)の活性化障害によるrenal tubular ricketsを伴つていた.以上の諸結果は,傍糸球体装置でのレニン分泌能は高いレベルにresettingされてはいるが,自律的ではないこと, A. IIに対する昇圧反応が体液量の変化に依存していること,さらに腎尿細管でのNa再吸収不全に基づく潜存的なNa喪失傾向の関与を示唆すると共に,本症の血圧調節維持に内因性A. IIが重要な役割を果していること,血管平滑筋に存在するA. II受容体がなお内因性A. IIに充分反応し得ることを示しており,本病態を考える上で重要な所見と考えられた.

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