日本内科学会雑誌
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慢性透析患者における血清ferritin濃度について
岩本 均
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1981 年 70 巻 1 号 p. 43-50

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抄録

慢性透析患者81名について血清ferritin,血清鉄, TIBCを測定し,さらに41名に鉄剤投与を試みて,鉄バランスに関する臨床的検討を行なつた.血清ferritinの値は正常人よりやや広い範囲に分布しており, 25%の患者は40ng/ml以下の値で鉄欠乏が疑われた.血清鉄, TIBCは正常人に比し低値であつた.血清ferritinは血清鉄との間には相関を認めなかつたが, TIBCとの間にはr=-0.58(P<0.001)で負の相関を, %transferrin saturation(以下%sat)との間にはr=0.43(P<0.001)で正の相関を認めた.血清ferritinとHtとの間にはr=-0.47(P<0.001)で負の相関を認め,造血能の強い患者ほど鉄欠乏の傾向にあることが示唆された,また鉄剤投与が貧血の改善に対して有効な群と無効な群とに分けると,血清鉄・%satは両群間に差はなく, TIBCは有効群に高かつた(P<0.05)が,両群間の重なりが多かつた.血清ferritinは有効群で著明に低く(P<0.001),全例100ng/ml以下であつた.以上より,透析患者では鉄欠乏の指標として血清鉄, TIBC, %satは不適当であり,血清ferritinがすぐれていると思われた.また鉄剤投与の適応は血清ferritin 100ng/ml以下の症例である.

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