日本内科学会雑誌
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自然気胸患者のベクトル心電図QRS環に関する研究
堤 健
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1981 年 70 巻 1 号 p. 51-63

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抄録

自然気胸患者(左側18例,右側ll例,両側1例)計30例を肺虚脱度により25%≧A群, 25~50%B群, 50%≦C群に分類し,急性期および回復期のベクトル心電図,前胸壁72点の多誘導心電図を記録,分析した.通電紙を用い人体正面,水平面の二次元モデルを作製し,肺相当部を気胸時に模して切り抜き,切り抜き部に垂直,平行の双極子による電場を検討し,臨床例と対比した.ベクトル心電図変化:左気胸; (1)QRS環はY, Z軸に沿つて細長く変形し,最大QRSベクトルは正面,水平面で減少その程度はB群で最大であつた. (2)スカラー心電図では, X軸R, S波の減高, Z軸S波の増高を認めた.右気胸; A, B群に一定の変化なく, C群でX軸R波軽度減高, Z軸S波軽度増高を認めた.多誘導心電図変化:左気胸時左側方でのR波の著明な減高,胸骨下方でS波増高, C群では他に胸骨右下方でR波増高部位を認めた.右気胸時は一定の変化を認めなかつた.二次元モデル実験:切り抜き部垂直方向通電では,切り抜き部外側電位は減少,対側の電位も軽度減少した.切り抜き部に平行方向通電の場合,切り抜き部の大きさに比例して,電場は切り抜き部と平行に細長く変形し,切り抜き部外側表面の一部では,むしろ対照に比し電位増大が認められた.このことより,気胸時のQRS環変化および,回復期の心電気軸の方向は肺の絶縁効果の大小に応じた心電場の変化によることが推定された.

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