抄録
褐色細胞腫の症例中,異所性例,小型腫瘍例,多発性例あるいは広範囲な転移性腫瘍例などでは,各腫瘍の局在を正確に術前診断することは必ずしも容易ではない.本稿では褐色細胞腫10例,副腎髄質過形成1例および本態性高血圧症1例の計12例について,大静脈内各所の血漿カテコールアミン(CA)濃度を測定し,その濃度分布から本腫瘍の局在診断を試みた自験例の成績をまとめ,本法の臨床的有用性について検討を加えた.褐色細胞腫例における大静脈内血漿CA濃度を解析することにより,全例で腫瘍の局在を示唆する所見が得られた.とくに,本法は異所性例や広範な転移を有する悪性例では,超音波検査やCTスキャンあるいは動脈造影法などの施行部位や範囲の決定にきわめて有用であつた.本法は手技も容易で危険な偶発症もほとんどなく,部位診断の初期に施行することにより,以後の画像検査を効率よく進めることができると考えられた.