日本内科学会雑誌
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肺線維症に合併した肺癌症例の臨床的検討
河野 修興高見 俊輔上綱 昭光大成 浄志山木戸 道郎西本 幸男築山 文昭
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1983 年 72 巻 12 号 p. 1731-1739

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抄録

特発性間質性肺炎(idiopathic interstitial pneumonia, IIP)と肺癌が合併した11症例の臨床所見を述べ,これら11症例(IIP-LCA群)と肺癌を合併していないIIPの25症例(IIP群)との臨床所見を比較検討し,若干の文献的考察を行なつた. IIP-LCA群の平均年令は65.6才であり,男性が10例,女性が1例であつた.職歴に一定の傾向はなく,喫煙歴は全例に認めた.胸部X線像上, 9例には腫瘤陰影を認めたが,腫瘤陰影を認めなかつた2例のうち1例は喀痰細胞診,他の1例は剖検にて肺癌が診断された.組織型は,腺癌が5例,扁平上皮癌,小細胞性未分化癌はおのおの3例であつた.死亡例は9例で, 6例に剖検が施行されたが, IIPと発癌の関係を組織学的に明確にすることはできなかつた. IIP-LCA群とIIP群を比較した結果,平均年令は前者で高い傾向がみられ,性別では両群とも男性が多かつた.免疫学的検査所見では両群とも何らかの異常を示したが,特にIIP-LCA群ではIIP群に比して有意に, α1-acid glycoprotein値の増加およびリンパ球のPHA反応性の低下を認めた.肺機能検査では, %VCはIIP群で, %DLはLCA群で有意に低値を示した. IIPと肺癌と合併頻度が高い理由は不明であるが,両者に共通してみられた免疫能異常に注目し,今後の検討を続けたい.

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