日本内科学会雑誌
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労作性狭心症におけるHolter心電図法の臨床的応用に関する研究
甲谷 哲郎
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1983 年 72 巻 6 号 p. 751-760

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抄録

本研究の目的は, 24時間Holter心電図法を労作性狭心症へ用い,本法の臨床的応用の問題点を明らかにすることである.研究I:自覚症状と心電図ST変化との比較.研究II:不整脈解析への応用およびトレッドミル運動負荷試験との比較.研究III:抗狭心症薬の薬効評価への応用,以上について労作性狭心症32例を対象として検討した.結果:研究I.狭心症発作(計128回)の中にはST低下を件う発作(typical attack)が約70%, ST低下を伴わない発作(false attack)が約30%認められた.また, ST低下(計156回)の中には狭心症発作を伴わないもの(silent attack)が約40%認められた.以上,狭心症発作はtyplcal attack, false attack, silent attackの3型に分類できた.また,狭心症発作に対する亜硝酸薬舌下使用の頻度は約25%と低率であつた.研究II.心室性期外収縮は,トレッドミル運動負荷法では6例(18.7%)に認められ,一方Holter心電図法では29例(59.4%)とより高頻度かつ重症度も高く検出された.しかし,狭心症発作時の重症心室性期外収縮の発生は少なかつた.研究III.抗狭心症薬の薬効評価においては自覚症状の改善に併せて, Hoter心電図上のST低下の頻度,程度,さらに質的変化(typical attackからsileat attackへの変化)を検討することが重要であつた.以上より, Holter心電図法は労作性狭心症のより正確な臨床像の把握および抗狭心症薬の薬効評価には有用な検査法と考えられた.

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