日本内科学会雑誌
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表皮ブドウ球菌性骨髄炎および菌血症を伴つた多発性骨結核の1例
厨 直美福田 孝昭江口 勝美三宅 清兵衛長瀧 重信
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1984 年 73 巻 5 号 p. 653-658

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抄録

ステロイド投与により顕性化したと考えられる多発性骨結核に,表皮ブドウ球菌性骨髄炎および菌血症を伴つたきわめてまれな症例を経験したので報告する.症例は56才,男性.主訴:発熱.現病歴:昭和55年4月より間歇熱が出現,抗生物質の投与をうけたが効果はなく,結節性動脈周囲炎を疑われステロイドを投与された.しかしその効果もなく,さらに激烈な胸痛が加わつたため11月当科に入院した.入院時現症:体温38.1°C,間歇熱.左背部に圧痛があるが他に異常はない.ただ仙腸関節を保護するための,骨盤を固定したような歩行を認めた.検査成績は血沈1時間値30mm, CRP(+),ツ反応(-).胸写では左第8肋骨に骨融解像,胸部断層写真で左上肺野に陳旧性肺結核像,骨X線写真では左坐骨に骨破壊・硬化像を認めた.血液培養から表皮ブドウ球菌,左坐骨の生検培養から同菌のほか結核菌も検出した.また99mTc骨シンチグラムからは眼窩,肋骨,腰椎,仙腸関節,坐骨,大腿骨にRI集積を認めブドウ球菌性骨髄炎および菌血症を伴つた多発性骨結核と診断した.抗生物質,抗結核薬投与後下熱とともに胸痛も消失した.抗結核薬治療8ヵ月後には胸写でみられた肋骨病変は消失し,骨シンチグラムに認められたRI集積像も著明に減少していた.ツ反応はステロイド中止後陽転した.したがつて本例は潜在性骨結核があり,ステロイド服用により播種したと考えられた.ステロイド投与中に原因不明の発熱がある場合には肺結核だけでなく骨結核も疑う必要があり, 99mTc骨シンチグラムは本症の早期診断,病巣の分布,治癒判定に有用であることを報告した.

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