日本内科学会雑誌
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トキソプラスマ抗体高値を示した皮膚筋炎の1症例
杉本 正毅西海 正彦佐藤 昭雄
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1985 年 74 巻 8 号 p. 1098-1102

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抄録
症例は75才の男性.皮疹と筋力低下を主訴に当院内科へ入院した.患者は昭和57月11月頃より主訴を自覚しており,それが翌年3月胃癌手術後に増悪し入院となつた.入院時よりGottron徴候等の特徴的皮疹と近位筋の対称性筋力低下を認め,血清CPK値の上昇,筋病性筋電図,筋生検組織における筋線維の変性と炎症性細胞浸潤より,皮膚筋炎と診断された.抗トキソプラスマ抗体はラテックス凝集反応,間接蛍光抗体法,色素試験の3法によつて測定され,いずれも高値陽性を示したが,間接蛍光抗体法による抗トキソブラスマIgM抗体の上昇はみられなかつた.また,筋組織中にトキソプラスマ虫体を証明することはできなかつた.しかし,ステロイドによる治療開始後,症状の改善と平行するようにラテックス凝集反応による抗体価の低下を認めた.抗トキソプラスマ抗体の上昇を伴つた皮膚筋炎の報告例の中には,本例のように過去のトキソプラスマ感染症の再活性化によると考えた方がよい例も含まれるが, Bohanの診断基準を満足する皮膚筋炎の定型例で,抗トキソプラスマ剤がその皮膚症状,筋症状に対しても著効を示し,急性トキソプラスマ症それ自身が多発性筋炎,皮膚筋炎の発症に関与していると思われる例も含まれ,両者の関連性が示唆されている.多発性筋炎,皮膚筋炎の病因,治療を考える上で興味深い症例と考えられたので報告した.
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