日本内科学会雑誌
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慢性関節リウマチと神経・内分泌・免疫系の関わり
鈴木 登
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2001 年 90 巻 6 号 p. 1097-1105

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抄録

代表的な膠原病である慢性関節リウマチ(RA)では神経,内分泌,免疫系の相互作用がその病態形成に関わる. RAでは,関節滑膜細胞によって分泌された炎症性サイトカインが関節局所の炎症を惹起し,同時に,全身性の急性炎症反応を引き起こす.それに伴い,患者では神経・内分泌・免疫軸の強い変化をきたす.
RA患者では視床下部・下垂体・副腎軸の欠陥,血中プロラクチンレベルの上昇,さらに血中性ホルモンレベルの異常が報告されている.これまでに中枢,末梢神経系による神経ペプチドを介した滑膜細胞機能の調節の不調がRAの炎症の惹起の少なくとも一部に関わることが示唆されている.我々の研究室では神経-内分泌-免疫軸の相互作用に関わる効果分子である内分泌ホルモン,オピオイド,神経伝達物質および神経ペプチドがRA関節滑膜細胞機能の調節に働くことを報告した.それらは実際,関節局所で産生・分泌され,またそれらの受容体は炎症関節内の各種細胞に発現されている.神経ペプチドや各種ホルモンはRA患者の全身性急性期反応に働くだけでなく, RA関節局所の炎症に直接作用する. RAでは神経ペプチドや各種ホルモンの不調が関節炎症を悪化させ,さらに全身性の免疫系,神経系,内分泌系そのものあるいはそれらの相互作用の不調をもたらすと考えられる.神経-内分泌-免疫の相互作用を,ホルモン,神経伝達物質,神経ペプチドなどの分子レベルで解析し,それらを応用することがRA治療への新しいアプローチとなる.

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