2005 年 94 巻 4 号 p. 619-625
骨粗鬆症の医療・社会的影響として骨粗鬆症とそれによる骨折が死亡率や生活の質(QOL)に与える影響と治療の費用対効果について検討した.大腿骨頸部骨折,脊椎椎体骨折においては死亡率は骨折後すぐに著明に上昇し,骨折後5年がたってもその死亡に対する相対危険度は有意に高いことも報告した.また大腿骨頸部骨折をきたすとその歩行能力は著しく低下し,治療により回復しても約半数が受傷前の歩行能力よりも一段階以上低下することがわかった.大腿骨頸部骨折全体の治療費は1年間で1,700億円,介護費用は4,400億円と推定されるが,ビスフォスフォネートなどの骨吸収抑制薬を適切に用いることにより費用と利益が拮抗する可能性があることがわかった.