日本内科学会雑誌
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94 巻, 4 号
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  • 折茂 肇
    2005 年 94 巻 4 号 p. 607-608
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
  • 森井 浩世
    2005 年 94 巻 4 号 p. 609-613
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    骨粗鬆症は全身の骨疾患で骨密度の低下と骨組織の微細構造の崩壊を生じ骨の脆弱性骨折をきたしやすくなる疾患である.原発性と続発性に分類され,原発性骨粗鬆症では閉経後のほか男性における骨粗鬆症が注目されている.診断基準については世界的にはWHOによるものが広く使用されているがわが国では異なる基準が採用されている.骨密度の測定が重要であるが米国では測定の適応と治療の適応が定められている.しかし米国では予防投与もおこなわれる.国際骨粗鬆症財団では最初の骨折の予防が重要であることを述べている.
  • 藤原 佐枝子
    2005 年 94 巻 4 号 p. 614-618
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    50歳以上の日本人女性の約25%は骨粗鬆症があり, 50歳女性の大腿骨頸部骨折のライフタイムリスクは約14%である.骨密度は骨折の重要な決定因子であるが,同じ骨密度を示していても,高年齢,既存骨折,喫煙,ステロイド使用,骨折の家族歴があると骨折リスクは高くなる.治療介入の指標として,これらの危険因子を考慮に入れた絶対リスク評価を取り入れることが検討されている.
  • 吉村 典子
    2005 年 94 巻 4 号 p. 619-625
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    骨粗鬆症の医療・社会的影響として骨粗鬆症とそれによる骨折が死亡率や生活の質(QOL)に与える影響と治療の費用対効果について検討した.大腿骨頸部骨折,脊椎椎体骨折においては死亡率は骨折後すぐに著明に上昇し,骨折後5年がたってもその死亡に対する相対危険度は有意に高いことも報告した.また大腿骨頸部骨折をきたすとその歩行能力は著しく低下し,治療により回復しても約半数が受傷前の歩行能力よりも一段階以上低下することがわかった.大腿骨頸部骨折全体の治療費は1年間で1,700億円,介護費用は4,400億円と推定されるが,ビスフォスフォネートなどの骨吸収抑制薬を適切に用いることにより費用と利益が拮抗する可能性があることがわかった.
  • 井上 聡
    2005 年 94 巻 4 号 p. 626-631
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    閉経後骨粗鬆症は,女性ホルモンの欠乏状態において病的に骨量が減少し,骨質が劣化して脆くなり,骨折をおこしやすくなった病態である.この際,骨吸収が著明に亢進し,高代謝回転型となる.その発症には,骨吸収を促進するサイトカインの産生をはじめ,多様なメカニズムが関与している.治療には,骨吸収を抑制する各種薬剤が有効である.新薬の開発のためにも,エストロゲンと関連薬の作用機序,閉経後骨粗鬆症の病態生理の解明が,期待される.
  • 池田 恭治
    2005 年 94 巻 4 号 p. 632-636
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    閉経後骨粗鬆症に比して,老人性骨粗鬆症の病因はほとんど理解されていない.加齢に伴うカルシウム恒常性の乱れに対する骨の代償反応,性ホルモン作用の低下,摂食行動やエネルギー代謝の変化,骨の細胞の加齢変化, I型コラーゲンに代表される骨基質タンパク質の変化などが病態に寄与すると考えられる.なかでも加齢に伴う腸管からのカルシウム吸収の低下と体内カルシウムバランスの負への傾きが重要で,荷重運動などの機械的刺激に加えて,カルシウムやビタミンDの適正な補充が推奨される.大腿骨頸部骨折の発生件数は,年々増加傾向にある.今後,生活習慣の啓蒙や,ビスフォスフォネート薬・ラロキシフェンなどの欧米並みの治療によって,骨折頻度と寝たきりがどの程度抑止できるか注目される.
  • 後藤 公宣, 大中 佳三, 高柳 涼一, 名和田 新
    2005 年 94 巻 4 号 p. 637-642
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    ステロイド骨粗鬆症は,続発性骨粗鬆症の代表的な病態である.発症要因としてはグルココルチコイド(GC)の骨に対する直接的な骨形成抑制作用が最も重要と考えられているが,性ステロイドの分泌を抑制することも発症に関与する.ステロイド骨粗鬆症においては,原発性骨粗鬆症と比較して,骨折閾値が高い. YAM値80%においても,ステロイド骨粗鬆症では新規の椎体骨折発生率が高くなることが知られている.
  • 井上 大輔
    2005 年 94 巻 4 号 p. 643-648
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    骨への力学的負荷が減弱した寝たきり患者や宇宙飛行士は,著明な骨量減少をきたす.この不動性骨粗鬆症の病態の特徴は骨吸収の亢進と骨形成の低下という,両者のバランスが破綻した“アンカップリング”である.力学的負荷は細胞内カルシウム上昇や様々なリン酸化カスケード・転写因子の活性化などをもたらすが,その作用機序には不明な点が多い.治療についてはビスフォスフォネートによる薬物療法を第一選択に考える.
  • 小竹 茂
    2005 年 94 巻 4 号 p. 649-655
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    関節リウマチの臨床における,この1年間での最大の変化は抗TNFα療法が我国でも普及してきたことである.さらに治験中のいくつかの生物製剤も今後使用可能になりつつあり,メトトレキサートが使用可能になった時以来の大きな変革期を迎えている.関節炎のコントロールは以前よりも容易になったが,関節リウマチ患者は骨粗鬆症を合併しやすい.関節炎の治療と併せて,骨折が生じる前に早期から骨粗鬆症の十分な評価と治療を行う必要がある.
  • 稲葉 雅章, 西沢 良記
    2005 年 94 巻 4 号 p. 656-662
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    骨粗鬆症は,骨組成に変動がなく骨量が減少して骨の力学的強度が低下した状態である.骨量の低下とともに骨質の荒廃も伴い,海綿骨骨梁の細小化や離断でその連続性が失われるような微細構造や石灰化基質の劣化などにより骨の脆弱性が増し易骨折性を示す疾患である.骨強度は,量(mass),質(quality),および構造(geometry)の3つの要素に依存しているが,臨床的診断は, dual energy X-ray absorptiometry (DXA)による骨量の測定によりなされる.しかし,最近では骨質の評価として骨代謝回転の評価が有用であることがわかってきた.また,骨微細構造の診断は3D-CTなどによる新規の画像診断による評価が試みられている.一方で,骨とは関連しない因子が骨折リスクを規定していることも知られてきた.高齢化とともに本症の罹患率が高まり,本疾患に基づく患者のQOL (quality of life)の低下や医療費の増大による社会経済的コストの増大が予想されている.そのため,どの時点で骨粗鬆症を診断し,治療を開始するかは患者のQOL低下や医療経済的な観点からも論議されるべき重要な課題である.
  • 伊東 昌子, 高尾 正一郎, 上谷 雅孝
    2005 年 94 巻 4 号 p. 663-669
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    脊椎X線写真に基づく椎体計測は骨粗鬆症の診断と治療効果判定に不可欠であり,定量的あるいは半定量的な評価をおこなう.骨脆弱性による骨折は骨盤骨や四肢骨にも認められるが,その診断に苦慮する場合,ならびに骨折の良性・悪性の鑑別診断にはCT, MR,骨シンチグラムなどの検査法が必要となる.骨折の診断における放射線学的なアプローチを中心に述べる.
  • 福永 仁夫, 曽根 照喜
    2005 年 94 巻 4 号 p. 670-674
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    骨強度は,骨硬度(骨密度)と骨質の統合を反映するが,骨密度は骨折の主たる予知因子である.そのため,骨密度の測定は,骨粗鬆症の診断,経過観察や治療効果の評価に用いられる.現在,種々の骨密度測定法が骨粗鬆症の臨床に応用されているが,使用に際してはそれらの特徴を熟知する必要がある.また,正確な測定を行うためには, quality controlとquality assuranceに留意する.本稿では,骨粗鬆症の臨床において必要な骨密度測定の基礎的な知識と応用の実際について概説した.
  • 三木 隆己, 嶋田 裕之
    2005 年 94 巻 4 号 p. 675-681
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    骨質の評価の重要性が明らかになり,骨粗鬆症の診断は骨密度だけでなく,骨折危険性が評価でき,しかも臨床評価の可能な骨代謝マーカーによる病態診断も重視されるようになった.複数の骨代謝マーカーの測定が健康保険で認められ,骨代謝亢進状態のカットオフの公表とともに,原発性骨粗鬆症治療効果判定(診断)およびその対応についてのガイドラインも公表され,患者も医者も納得のいく医療を実施できる環境が整ってきた.
  • 白木 正孝
    2005 年 94 巻 4 号 p. 682-689
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    我が国における骨粗鬆症治療は最近長足の進歩を遂げ,骨粗鬆症による骨折予防が現実の問題として可能となりつつある.しかしそのEBMはまだまだ不足しており,多くのEBMが海外データに依存している.今後我が国におけるEBMを確定しなければならないが,そのなかでもビスフォスフォネート系薬剤のEBMは比較的完備しており,骨粗鬆症の第一選択薬となってゆくと思われる.その他の薬剤についてはその適応を今後も探索しなければならない.
  • 山内 美香, 杉本 利嗣
    2005 年 94 巻 4 号 p. 690-695
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    ビタミンD, Caは,特に高齢者に不足状態が存在し,骨粗鬆症の危険因子として重要であることが再認識され,補充療法としての位置付けも高まってきている.また,ビタミンDの筋力増加や運動能力の改善といった骨以外への作用が注目されており,これらの作用が転倒率を抑制し骨折率の低下につながっている可能性がある.さらに,活性型ビタミンD3の骨への作用を特化した新規ビタミンD誘導体の,臨床応用への展開が進んでいる.
  • 竹内 靖博
    2005 年 94 巻 4 号 p. 696-701
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    骨粗鬆症治療において,疾患特異的な治療薬であるビスフォスフォネートの有効性と安全性は確立されたといえる.ビスフォスフォネートは骨吸収を強力に抑制し,引き続いて骨密度を増加させ,さらには治療開始から1年以降になると骨折発生を抑制する.骨粗鬆症の治療目的は骨折の予防であり,閉経後女性を対象とした臨床研究の成績から,アレンドロネートやリセドロネートなどの薬剤による骨折発生を抑制する優れた効果が立証され,さらに疼痛の軽減などQOLの改善にも踏み込んだこれらの薬剤の臨床的有用性が検討されつつある.
  • 岡崎 亮
    2005 年 94 巻 4 号 p. 702-707
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    ラロキシフェンはSERMという新しいカテゴリーに属する薬剤である.骨においてはエストロゲン様に作用し,骨吸収を抑制し,椎体骨折を抑制することが確認されている.一方,乳腺や子宮内膜に対してはアンチ・エストロゲンとして作用し,乳癌発生を抑制し,子宮内膜は増殖させない.エストロゲンと同程度に深部静脈血栓症のリスクは増大させるが,エストロゲンと異なり,心血管障害のリスクは,少なくとも増加はさせない.
  • 太田 博明
    2005 年 94 巻 4 号 p. 708-713
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    HRT/ERTは骨粗鬆症による骨折防止効果は明らかであるが,同等の効果を有する他の薬剤があるので,閉経後骨粗鬆症の予防を目的に使用する時は,代替療法を慎重に検討すべきである.骨折リスクは年齢とともに増加するが, 65歳以上では痴呆も2倍増加し, HRT/ERTの使用によりこの痴呆はさらに2倍増える.以上から, HRT/ERTは現時点では血管運動症状を伴わない骨粗鬆症の予防・治療には勧めるべきではない.
  • 細井 孝之
    2005 年 94 巻 4 号 p. 714-719
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    骨芽細胞におけるWntシグナル伝達に重要な役割を果たすLRP5遺伝子の突然変異には,骨量増加をもたらすものと骨量減少をもたらすものの両方があることが知られている.さらに本遺伝子の多型性が一般の集団においても骨量と相関することから, LRP-5遺伝子の多型性が骨粗鬆症発症において重要な役割を果たす可能性がある.
  • 福本 誠二
    2005 年 94 巻 4 号 p. 720-723
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    カルシウム調節ホルモンの一つであるPTHは,骨吸収促進作用と共に骨形成促進作用を有している. PTHの間歇投与により,海綿骨量の増加,骨折率の低下が惹起されることが明らかにされた.ただし, PTHとビスフォスフォネート製剤の併用は相加効果を示さず,むしろPTH製剤単独の効果を減弱させるようである.今後本邦でもPTH製剤が使用可能となることにより,骨粗鬆症に対するより幅広いアプローチの確立が期待される.
  • 平野 智哉, 長谷川 裕, 前田 裕一郎, 近藤 信一, 鎮西 忠信
    2005 年 94 巻 4 号 p. 747-749
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    単純ヘルペス脳炎は本邦では年間約300~400例の発症とされているが1,2),なかでも妊婦単純ヘルペス脳炎は極めて稀であり,本邦で4例3),海外でも約20例強4)の報告しかない.今回,頭部MRIが早期診断に有用であり,アシクロビル投与にて母児共に経過良好であった1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
  • 楠原 健一, 西浦 亮介, 谷山 茂人, 矢澤 省吾, 工藤 隆志, 山本 展誉, 野口 玉雄
    2005 年 94 巻 4 号 p. 750-752
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は35歳,男性.ハコフグ注)喫食後に横紋筋融解症,急性腎不全を発症.血液浄化法を導入し,腎機能障害を残さず治癒退院した.アオブダイに含まれるパリトキシン(PLTx)により横紋筋融解症が誘発されることが知られているが,今回患者検体の分析からハコフグに含まれる「PLTx様物質」の関与が示唆された興味深い症例として報告する.注)本症例では魚種を同定できておらず,「ハコフグ科魚類」の意味で「ハコフグ」を使用する.
  • 内藤 雅大, 堀池 眞一郎, 岩佐 元雄, 生駒 次朗, 垣内 雅彦, 足立 幸彦
    2005 年 94 巻 4 号 p. 753-755
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は43歳,男性.アルコール多飲により高度の肝機能障害を呈し,断酒後も黄疸が遷延した.検査成績では多核白血球優位の高度白血球増加,プロトロンビン時間の低下を認め,重症型アルコール性肝炎と診断した.肝不全に対し計8回の血漿交換施行し,白血球,サイトカインの除去目的に顆粒球除去療法を計2回施行した.しかし,肝不全の改善は認めず,家人と相談の上,妻をドナーに生体肝移植が施行された.経過は良好である.
  • 辰田 仁美, 細 隆信, 高木 伴幸, 垣本 哲宏, 島田 健, 坂本 浩一, 菊岡 弘芳, 近藤 溪, 南條 輝志男
    2005 年 94 巻 4 号 p. 756-758
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    55歳,女性. 2002年7月進行型小細胞肺癌の診断のもとに,全身化学療法を行い, partial response (PR)を得た.しかし平成15年1月多発性脳転移にて再燃再入院した.全脳照射,メソトレキセート(MTX)の髄空内投与を行ったところ,汎血球減少をきたした.その原因として,全脳照射, MTXの髄腔内投与, disseminated intravascular coagulation (DIC)の関与等も想定されたが,骨髄所見より血球貪食症候群が原因と診断した.二次性の血球貪食症候群としては,感染症・悪性腫瘍・自己免疫等が報告されているが,悪性腫瘍,なかでも肺癌に伴うものは少ないため報告する.
  • 紺野 衆
    2005 年 94 巻 4 号 p. 759-762
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は16歳,女性. 15歳時,てんかんの診断でsodium valproate (VPA)が投与されたが,コントロールは不良であつた. 16歳時,部分発作の二次性全般化と診断され, VPAからcarbamazepine (CBZ)に抗てんかん薬が切り替えられた.しかし, CBZ投与1週間後からエレクトーン演奏中に音階が半音下がるという聴覚異常が出現した.聴覚異常がCBZの副作用の可能性が高かったために, CBZを中止したところ聴覚異常は消失した.
  • 渡辺 雅人, 中田 光
    2005 年 94 巻 4 号 p. 763-768
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    肺胞蛋白症(Pulmonary alveolar proteinosis, PAP)は肺胞および呼吸細気管支内にサーファクタント(Surfactant, SF)が貯留する希な肺疾患である.臨床的には先天性,二次性,特発性に分類される.二次性は血液疾患や感染症に続発し,特発性は抗GM-CSF自己抗体により発症する. GM-CSF欠損マウスの研究により, GM-CSFシグナル異常,肺胞マクロファージの成熟障害,サーファクタントの代謝障害が主要な病態であることがわかった.また,特発性で出現する自己抗体は, GM-CSFを強力に中和しPAPを発症する.これらの研究より,肺におけるGM-CSFの重要な役割が明らかになった.治療として全肺洗浄が有効であるが,近年はGM-CSF療法が良好な成績をあげている.本稿では,肺内におけるGM-CSFの役割とPAPの病態,最近の治療法について概説する.
  • 沖田 極, 寺井 崇二, 坂井田 功
    2005 年 94 巻 4 号 p. 769-774
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    骨髄には造血幹細胞が存在し白血病患者に対する骨髄移植によって患者の体内で一生に渡り血球細胞を供給することが可能である.骨髄移植は既に20年以上の実績を積んだ体性幹細胞を用いた再生医療である.最近になり男女間での骨髄移植の結果,骨髄由来の肝細胞,小腸細胞への分化が確認され,骨髄中に多分化能を持つ“骨髄由来幹細胞”の存在が考えられるようになった.すでに循環器領域では虚血性疾患に対して臨床応用として血管新生を誘導するために自己の骨髄細胞を患部に自家移植する試みがすでに行われてきた.我々は自己骨髄細胞を用いた肝臓再生療法を開発するため,どんな状況で骨髄細胞移植が有効であるかを検討し,持続肝障害が続く状態において骨髄細胞が肝再生誘導,肝線維化制御に役立つことを見出した.さらにそれらの基礎研究の結果を基盤とし,国内最初の臨床研究:自己骨髄細胞を用いた肝臓再生療法のPhasel研究を平成15年11月より開始し現在進行中である.
  • 波田野 靖子, 李 暁冰, 服部 信孝, 水野 美邦
    2005 年 94 巻 4 号 p. 775-781
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    家族性パーキンソエズムではPARK1-11までの遺伝子座がマップされ,そのうちα-synuc1ein, parkin, UCH-L1, DJ-1, Nurr1, LRRK2/dardarinの原因遺伝子が同定された.そして現在その遺伝子産物の機能解析が進められている.最近になり常染色体劣性遺伝性パーキンソニズム(ARPD)の新たな原因遺伝子としてPINK1が報告された. PINK1遺伝子変異は日本とイタリアを中心に報告されているが, parkin遺伝子変異に次いで頻度の高い遺伝子異常であることが指摘されている.その臨床型は,発症年齢は平均32歳,発症時のジストニアや睡眠効果などPARK2に見られる特徴的な臨床症状は目立たず,むしろ孤発型パーキンソン病(PD)との類似性が指摘されている. PINK1の機能は未だ不明だが,ミトコンドリア機能異常との関連が指摘されている.孤発型PDには,ミトコンドリア電子伝達系の機能低下が重要な病態であるとする多くの確証が存在する.このことは遺伝性と孤発型が共通したメカニズムによって惹起されることを意味している.まだ報告例は少ないが, PINK1遺伝子の同定によりパーキンソン病の分子遺伝学的研究はさらなる展開を迎えた.
  • 玉川 聡, 魚住 武則, 辻 貞俊
    2005 年 94 巻 4 号 p. 782-787
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    経頭蓋磁気刺激法(TMS)は変動磁場によって生じた渦電流により,深部の神経組織を刺激するものである.運動誘発電位(MEP)検査は,一次運動野にTMS与えることにより誘発される筋電図変化を記録する方法であり,様々な神経疾患の診断に役立てられている.この検査では主にMEP閾値, MEP潜時, MEP振幅の3つを評価の対象としており,これらのパラメータの評価により軸索の脱落や脱髄といった神経障害の機序を推測することができる.
    反復経頭蓋磁気刺激法(rTMS)のうち,高頻度rTMSではコイル直下の大脳皮質の興奮性が増大し,低頻度rTMSでは抑制されることが知られている.そのため,大脳皮質興奮性の異常をきたす病態に対して治療的に用いる試みがなされているが,現在のところ治療法としてコンセンサスを得られるには至っていない.
  • 寺本 信嗣, 山本 寛, 山口 泰弘
    2005 年 94 巻 4 号 p. 788-793
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    COPDは完全には治らないが,治療できる病気である.治療薬から,病態を捉えれば,「COPDは,吸入抗コリン薬が奏効する閉塞性換気障害」である.吸入抗コリン薬は,副作用も少なく,肺気腫が大半を占める本邦のCOPD患者には安定期治療の第一選択薬となる.定期吸入によって,肺機能が改善し,息切れが減少し,生活の質が改善する. 2005年から使用可能なTiotropium bromineは,ムスカリン受容体M3を選択阻害し,一日1回1吸入で効果が得られる.また, β2刺激薬の追加効果もあるため,長時間作用型β2刺激薬(LABA)または短時間型作用型β2刺激薬(SABA)が併用される.欧米では, LABAとステロイドの合剤の吸入薬も使用されている.吸入療法は,病態の上から最も理にかなった治療であり,禁煙の徹底と同時に早期に吸入療法を導入し,治療のされない「neg1ected disease」から,誰もが治療できる「common disease」へ転換すべき時代を迎えている.
  • メタボリックシンドローム診断基準検討委員会
    2005 年 94 巻 4 号 p. 794-809
    発行日: 2005/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
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