農業従事者の高齢化等により,農業経営体数は減少している.今後,地域農業を維持していくことが求められるが,そのためには,離農予測モデルにより将来の農業経営体数を予測するとともに,離農に伴う供給農地面積を事前に把握することが重要である.一般に,社会システムの分析や予測の実施には社会モデリング・シミュレーションのいくつかの手法が用いられており,離農予測モデルでもそれらの手法が応用されている.離農予測モデルについては,これまでマルコフモデルを用いた手法が非常によく用いられてきた.マルコフモデルは,広域地域を対象とした場合には,予測精度も高く有用な手法である.一方で,マクロ的に集計された推移確率行列の値を用いるため,個々の農業経営体の属性を十分に考慮できず,またより狭い範囲の地域の予測は難しい.そこで,個々の農業経営体ごとに離農予測を行い,その結果を積み上げるミクロ的手法も近年提案されている.農研機構においても,機械学習とマイクロシミュレーションを利用して,市町村単位でも精度が高い推計結果が得られる農業経営体数予測モデルを開発した.