2021 年 2021 巻 6 号 p. 43-52
地球温暖化対策や生物多様性保全などの環境保全型農業に関する研究成果の普及にあたっては,生産者の類型化によって潜在的ユーザーとなりうる層を絞り込み,その特性に合った普及活動をしていくことが重要である.本研究では,生産者に対する環境保全型農業の取り組みやそれに関する特性についてのアンケート調査を行い,因子分析やクラスター分析を用いて生産者を 5 つのクラスターへ類型化した.クラスター毎に環境保全型農業の取り組み割合は大きく異なっており,類型化がユーザー層の絞り込みに効果的であることが示された.具体的には,日常生活での環境意識が高い農家,もしくは情報技術の活用度が高い大規模農家のクラスターで環境保全型農業の取り組み割合が高かった.また,地球温暖化対策と生物多様性保全の取り組み割合が最も高いクラスターがそれぞれ分かれるなど,環境保全型農業の内容によってターゲットが変わりうることも示唆された.さらに,環境保全型農業の取り組み割合が高い集団の情報源として,インターネット(クチコミではなく公的機関のサイト),書籍,セミナー・講演会があり,これらのチャネルを通じた普及活動が有効であることも示唆された.
環境保全型農業とは,平成 6 年に農林水産省環境保全型農業推進本部が策定した環境保全型農業の基本的考え方により「農業の持つ物質循環機能を生かし,生産性との調和などに留意しつつ,土づくり等を通じて化学肥料,農薬の使用等による環境負荷の軽減に配慮した持続的な農業」と定義されている.農林水産省は環境保全型農業の推進を行っており,例えば化学肥料や化学合成農薬を原則 5 割以上低減する取組と合わせて行う地球温暖化防止や生物多様性保全に効果の高い営農活動に対して直接支払い交付金の交付を行っている(農林水産省 2020).また,環境保全型農業の取り組み効果を科学的に評価するための手法として,地球温暖化対策では web サイト上で場所や管理の情報を入力して土壌の CO2 吸収量を計算することができる「土壌の CO2 吸収「見える化」サイト」((独)農業環境技術研究所 2013),生物多様性保全に関しては「農業に有用な生物多様性の指標生物調査・評価マニュアル」(農林水産省農林水産技術会議事務局ら 2012)等がこれまでに公開・公表され,上記の直接支払い交付金における取り組み効果の評価に活用されている.
生産者が取りうる農法の多様化が進んでおり,生産者全体を対象とした普及活動は非効率であり,環境保全型農業の取り組みを推進する研究成果を生産現場に普及していく際には効果的・効率的に行う必要がある.よって,生産者の類型化によって研究成果の潜在的ユーザーとなりうる層を絞り込み,その特性に合った普及活動をしていくことが重要である.
このような類型化は,マーケティングの分野ではSTP(segmentation, targeting, positioning) 戦略のなかのセグメンテーションとして位置づけられている(仁平 2006).セグメンテーションには地域・年代・性別等の属性による区分が従来から用いられてきたが,それだけではなぜその層に受け入れられやすいかの説明ができない.そのため,心理・行動的変数を組み込むことでニーズを把握することが主流となっている.農業分野においても,消費者ニーズの掘り起こしなどを目的としたマーケティングリサーチの手法を用いた研究の蓄積がある(磯島 2009).また,日本国内における環境保全型農業の訴求力について,農産物を購入する消費者意識を対象としたセグメンテーションの研究事例がある(西村ほか 2012,Oishi 2015,水木 2016).これらの研究では,アンケート調査結果から心理・行動的特性を因子分析で変数化したり,クラスター分析を用いて集団を細分化したりする分析手法が使われている.しかしながら,生産者を対象とした同様の研究事例はない.
本研究は,環境保全型農業の取り組みを推進する研究成果の潜在的なユーザーの特性を把握することで,効率的・効果的な研究成果の普及活動に資することを目的とする.そのため,アンケート調査をもとに生産者の特性を分析し,その特性による類型化(クラスターの分類)を行い,クラスター間での各種環境保全型農業の取り組み状況の差を明らかにした.
1. 生産者に対するアンケート調査
2019 年 11 月に農業生産者に対するWEB アンケートを実施した.楽天インサイト株式会社に登録しているモニターの中から,仕事パネル【農業】耕種農業(米作・野菜・果樹・花など)の 1602 人を調査対象とした.対象者にアンケートを配信し,目標である 500 名の回答を得た時点で締め切った.
対象者の属性として,年代,性別,最終学歴,居住する都道府県,専業農家か兼業農家か,主要な(販売金額の最も大きい)栽培作物,販売金額規模を尋ねた.また,各種環境保全型農業を実施しているかどうかを尋ねた.さらに,環境保全型農業の取り組みと関連する生産者の特性を明らかにするための質問を以下に示す通り行った.まず,環境保全型農業への認知として,環境保全型農業に何を期待しているかについてと,環境保全型農業のデメリットはどのようなものがあるかについて尋ねた.次に,環境配慮行動と環境保全型農業の取り組みとの関係を調べるため,日常行っている環境配慮行動を尋ねた.環境配慮行動の質問事項は環境省による環境にやさしいライフスタイル実態調査(環境省 2017)の質問事項を参考とした.また,環境保全型農業は上述の CO2 見える化サイトのように,情報技術(IT)を活用した取り組みが効果的と考えられるため,農作業や農業経営におけるIT の活用度について尋ねた.IT 活用度に関する質問項目は既存のアンケート調査研究を参考にした(南石ら 2013).さらに,農業あるいは環境問題に関する情報源について尋ねた.これは,環境配慮行動の規定要因の一つに外的情報源による認知がある(平湯 2017)ことと,どのようなチャネルを通じた普及活動が有効かの参考になるためである.情報源に関する質問事項は環境配慮行動と同様に環境省(2017)の質問事項を参考とした.
2. データ解析
質問事項から,生産者の特性を抽出するための因子分析を行った.因子分析は(1)環境保全型農業への期待,(2)環境保全型農業のデメリット,(3)日常行っている環境配慮行動,(4)農作業や農業経営における IT の活用度,(5)農業あるいは環境問題に関する情報源の 5 つに分けてそれぞれ行った.因子数は最小偏相関平均(MAP)法とベイズ情報量基準(BIC)から得られる因子数の範囲の中で探索的に決定した.データはすべて 0 か 1 かの 2 値データであるため最尤法によるカテゴリカル因子分析を行い,回転法はオブリミン回転を用いた.因子スコアは最大事後分布法により得た.解析には統計ソフト R(ver3.6.3)の mirt パッケージを使用した.
属性と因子分析によって得られた各因子の因子スコアのデータをプールし,対象者をグルーピングするためのクラスター分析を行った.手法は k-means 法による非階層クラスター分析を用い,クラスター数は探索的に 5 と設定した.解析には因子分析と同様に統計ソフト R(ver3.6.3)を使用した.
1. アンケート結果
アンケート回答者 500 名の属性を表 1 に示す.総務省による平成 29 年度就業構造基本調査(総務省 2018)によると,農業者の性別比は男性 62%・女性 38% であり,年代は 20 代 4%・30 代 8%・40 代 10%・50 代 12%・60代 31%・70 代 24%・80 代 10%,最終学歴は中学 23%・高校 52%・専門+短大 15%・大学 9%・大学院は<1%となっている.本研究の対象者はそれに比べると男性割合が高く,大幅に若く高学歴な集団となっている.居住地域に関しては全国に分散しており,地域的に大きな偏りがないことが確認された.

農林水産省による平成 31 年農業構造動態調査(農林水産省 2019)によると,専業農家 32.6%・第 1 種兼業農家 15.7%・第 2 種兼業農家 51.7% となっており,本研究の対象者は専業農家の割合が多い集団となっている.2015 年農林業センサス(農林水産省 2016)によると作物毎の経営体数は稲 54%・麦+豆 8%・野菜 22%・果樹類 13% となっており,本研究の対象者は米・麦・豆農家の割合が少なく野菜・果樹類農家の割合の多い集団となっている.同様に 2015 年農林業センサスによると,販売金額については 300 万円未満 68%・300 万円以上 1,000 万円未満 13%・1,000 万円以上 3,000 万円未満 7%・3,000 万円以上 1 億円未満 2%・1 億円以上が 1% 未満となっており,本研究の対象者は大規模農家に若干偏っている.
各種環境保全型農業の実施率を図 1 に示す.慣行栽培のみが 46.8% であるので,半数以上の回答者が何らかの環境保全型農業に取り組んでいることになる.内訳としては堆肥の施用が最も多く,特別栽培がそれに続いた.生物多様性保全や地球温暖化対策はそれぞれ 3.2%・5.0%と低い割合となった.2015 年農林業センサスによると,何らかの環境保全型農業に取り組む経営体 34%・化学肥料低減 21%・農薬低減 26%・堆肥による土づくりが 16%となっており(農林水産省 2016),単純に比較できないが本研究の対象者は環境保全型農業への取り組み割合が高い集団となっている.

2. 生産者の特性と因子分析
環境保全型農業への期待に関しては,持続的な農業や食品の安全性への期待が高かった(表 2).生産物価格の上昇については,持続的な農業や食品の安全性への期待よりも低く,経済的な期待があまり高くないもしくは現状あまり高値で売れていないことが示唆された.因子分析の結果,環境保全型農業への全体的な期待度を示す 1 因子にまとまった.環境保全型農業のデメリットに関しては,大きな作業負担や余分な追加コストを選択した回答が多かった(表 3).因子分析の結果,環境保全型農業への全体的な負担感を示す 1 因子にまとまった.日常行っている環境配慮行動に関しては,ごみの分別ルールを守ったり節電等の省エネに努めたりするなどの回答が多かった(表 4).因子分析により 2 因子が抽出され,第 1 因子については日常生活の環境配慮行動といずれも負の関係があったことから,「日常生活で環境配慮しない度合い」因子とし,第 2 因子については周りへの情報提供や買い物において環境に配慮した購買行動をとるなどの項目との関連があることから「社会環境に配慮する度合い」とした.なお,表2~ 4 まで,累積寄与率が 0.25~ 0.46 と低いが,いずれも MAP 法と BIC が提案する最大の因子数となっている.



農作業における IT 活用度に関しては,約 2 割が何らかの情報機器を活用しており,そのうち気温や雨量等の気象センサーを活用していると回答した生産者が多かった(表 5).PC による農業経営管理においては,約 6 割が何らかの経営管理に PC を用いており,中でも財務管理や農薬や肥料等の資材管理,生産履歴の管理への活用が多かった(表 5).因子分析により 2 因子が抽出され,経営に IT を活用しない度合いを第 1 因子,農作業に ITを活用しない度合いを第 2 因子とした.農業に関する情報源については,農協や農業普及員が約 6 割,職場・友人・家族など身近な人が約 4 割と高くなっており,いずれにしても顔見知りの人からの情報を重視していることが明らかとなった(表 6).一方で環境問題に関する情報源については,テレビや新聞が 5 割超で最も高く,マスコミからの情報の影響が強いことが明らかとなった(表 6).因子分析により 5 因子が抽出され,農業か環境問題かは関係なく情報源によって因子が分かれた.つまり,農業と環境問題は同様な情報源を使っていることが示唆された.第 1 因子はネットよりも身近な人の情報を重視する度合い,第 2 因子は書籍からの情報を重視する度合い,第 3 因子はネットを良く使うが国などの公的機関の情報ではなく SNS 等のクチコミを重視する度合い,第 4 因子はテレビや新聞などのマスメディアの情報を重視する度合い,第 5 因子はネットのクチコミなどは重視せずセミナーや講演会に足を運んで情報を得る度合いとした.


3. クラスター分析による生産者の類型化
年齢など 6 種類の属性(表 1;居住地域の情報は使用せず),因子分析によって得られた 11 種類の因子スコア(表 2 ~ 6)の合計 17 変数を用いてクラスター分析を行い,500 名の回答者を 5 類型に分類した(表 7).クラスター 1 はあまり特徴がなく平均的な特性をもっているため【平均型】と名付けた.クラスター 2 は年齢が 60 代以上,兼業農家,コメ農家,小規模の割合が高いという特性を持っているため【高齢零細型】と名付けた.クラスター 3 は環境保全型農業への期待や日常生活の環境配慮度,農作業や農業経営への IT 活用度が高く,書籍が主な情報源という特性を持っているため勉強熱心な【環境意識高い型】と名付けた.クラスター 4 は環境保全型農業への期待や日常の環境配慮度が低いという特性を持っているため【環境に興味なし型】と名付けた.【環境に興味なし型】は他にも年齢が若い,女性割合が最も高い,低学歴,専業農家が多い,コメ以外の作物が多い,IT の活用度が低い,ネットのクチコミを重視するなどの特性を持つ.クラスター 5 は年齢が若い,専業農家が多い,コメ以外の作物が多い,大規模,農作業や農業経営への IT 活用度が高いという特性を持つため【スマート農業型】と名付けた.
5 類型に分類したクラスター毎の各種環境保全型農業の取り組み割合を見ると,クラスター毎に取り組み割合が異なる結果となった(表 7).まず,何らかの環境保全型農業の取り組みを行っている割合が最も高い(= 慣行農業のみの割合が低い)のはクラスター 3【環境意識高い型】であり,次にクラスター 5【スマート農業型】が続き,最も取り組み割合が低いのはクラスター 4【環境に興味なし型】であった.環境保全型農業の内訳を見ると,有機栽培・特別栽培・堆肥の施用・地球温暖化対策についてはクラスター 3【環境意識高い型】が最も取り組み割合が高かったが,エコファーマーと生物多様性保全の取り組みについてはクラスター 5【スマート農業型】が最も割合が高かった.

1. 環境保全型農業の取り組み
環境保全型農業への取り組み割合が高いのはクラスター3【環境意識高い型】とクラスター5【スマート農業型】であった(表 7).また,地球温暖化対策は【環境意識高い型】で生物多様性保全は【スマート農業型】で取り組み割合が高いなど,環境保全型農業の種類によって取り組み割合が高いクラスターが分かれる結果となった.ただし,日本の農業における生物多様性保全はこれまで水田が主要な場であったが,クラスター 5 はコメ農家以外の割合が多いため,野菜作等における生物多様性への取り組み技術の開発が重要な課題となろう.
環境保全型農業への取り組み割合が高いクラスター3【環境意識高い型】では環境保全型農業への期待感が最も高かったが,同時に環境保全型農業への負担感も最も高かった.反対にクラスター 4【環境に興味なし型】の環境保全型農業への負担感は最も低かった.実際に環境保全型農業に取り組んでいる方が知識・経験があるため,デメリットについてもよく知っていることが原因と考えられた.つまり,負担感が大きいから環境保全型農業に取り組まないのではなく,単純によく知らないということが取り組みを阻害する要因である可能性もある.
図 1 において有機農業や堆肥の施用の取り組み割合よりも地球温暖化対策の取り組み割合が低くなっていたが,実際には有機農業や堆肥の施用にも地球温暖化対策に有効な場合がある.図 1 に示したような選択肢ではそのような場合にどう回答をすべきか曖昧であるという問題があったが,有機農業などの他の項目には該当しない地球温暖化対策を実施した方が主に回答していたのではないかと考えられる.これは,有機農業は環境保全のみが目的ではなく,より幅広い概念を含んでいるためである.生物多様性保全も同様に,有機農業や特別栽培にも効果がある場合があるが,例として冬季湛水と書いたようにこれらに該当しない生物多様性保全対策を実施した方が主に回答したと考えられる.
2. 環境保全型農業の取り組み要因に関する既存研究との比較
国内における環境保全型農業の取り組み要因を解析した研究として,農業センサスなどの全国的な大規模調査結果を用いた研究と,地域特徴的な取り組み事例を調査した研究がある.2000 年の農業センサスデータを用いた全国的な傾向としては,環境保全型農業の取り組み割合が高い農家の特徴として,専従者がいるなどの投入労働力が多い,大規模経営,野菜作,複合経営などがあることが報告されている(藤栄 2003).また,都市部か中山間地かなどの地域間では取り組み割合に変化がなかった.2010 年の農林業センサスデータを用いた別の分析においてもほぼ同様に,中規模で多部門展開をしている経営体,若年・専従労働力の存在,夏季に十分な降水と日照がある地域,が環境保全型農業への取り組み割合にプラスの影響を与えることが報告されている(松浦ほか 2016).地域特徴的な取り組みを調べた事例では,滋賀県の「環境こだわり農業」の認定農家は慣行農家と比較して経営規模が大きい,専業農家の割合が高いなどの特徴があり,環境認識には違いがないという報告がある(黒澤ら 2005).このほか島根県の事例では,中山間地に立地,経営面積が大きい,生活維持の機能にあたる集落活動の実施,が環境保全型農業の取り組みと関連があることが示された(井上ら 2014).これらの結果は,本研究において専業・大規模を特徴とするクラスター 5【スマート農業型】で環境保全型農業の取り組み割合が高いことと一致する.
海外においては環境保全型農業の取り組み要因に関する 23 研究の 31 分析事例をレビューした結果が報告されており,少なくとも一つの分析で要因と判定されたものは 167 変数にわたるものの,普遍的に適用できる要因はほとんどないことが示された(Knowler and Bradshaw 2007).そして,普遍的な変数を見出すよりも地域の特定の条件に合わせる必要があると結論付けられている.他にも海外では社会心理学モデルを用いた研究がある.意識と行動につながる社会心理学的理論モデルとして計画的行動理論が知られている(平湯 2017).計画的行動理論では,実行しようとする行動に対する自身によるポジティブな「態度」,その行動を自身だけではなく他者からも望まれているという認識である「主観的規範」,行動の実行可能性が高いと認識する「コントロール感」の 3 つが行動意図につながるとする.この計画的行動理論をベースとして,生産者が環境保全型農業に取り組む要因を調べる研究が行われてきた.例えば Beedel and Rehman (1999)によると,イギリスの農業・野生生物アドバイザリーグループの加盟農家(環境保全志向の高いグループ)は,そうではない農家に比べて,農地脇の生け垣の管理に関して野生生物保全上の効果を高く評価し(態度),大きな社会的圧力を感じていた(主観的規範).また,Deng et al. (2016)では,中国の生態系サービス直接支払いプログラム下において,生産者の意思決定プロセスに影響を与える要因を調査した結果,プログラムへの支持の程度や環境保全効果の認識(態度),近隣住民からの圧力(主観的規範),生態系保全に参加する時間と労力(コントロール感)の 3 つが生産者の生態系保全の行動意図に対して有意に影響を与えていることを明らかにした.
本研究の結果では,クラスター 3【環境意識高い型】は環境保全型農業への期待感が高く(態度が強い),書籍等の勉強により環境保全型農業が社会から求められているという認識も高い(主観的規範が強い)ので,これが環境意識が高いという特性と環境保全型農業の取り組み行動につながっていると考察される.一方でクラスター 5【スマート農業型】については,環境保全型農業への期待感は高くなく,日常の環境配慮行動も少ないなど環境意識はあまり高くないものの,専業で大規模に IT を駆使して効率的に農業を行っているので,コントロール感(実行可能性)が高いことが要因となり,これが環境保全型農業の取り組み行動につながっていると考察される.すなわち,必ずしも環境意識が高くない人でも環境保全型農業の取り組みを伸ばせる可能性もある.
3. 環境保全型農業に関する研究成果の効率的な普及活動に向けて
本研究において生産者の特性を用いた類型化を行った結果,環境保全型農業の取り組み割合は高いクラスターと低いクラスターで大きく異なる結果となった(表 7).すなわち,環境保全型農業の推進に資する研究成果の普及活動は,全ての層に一律に行うと効率の悪いものとなるため,潜在的ユーザーを絞った普及活動が効果的であることが示された.対象を絞った成果の普及活動としては,例えば環境意識の高い集団に研究成果を届けるには,農村地域での環境イベントでの普及活動を行ったり,環境意識を刺激するキャッチコピーを作成したりなどの取り組みが考えられる.
成果の普及のチャネルについては,ウェブサイトを用いた活動が有効と考えられる.本研究の結果,環境保全型農業への取り組み割合が高いクラスター3【環境意識高い型】やクラスター 5【スマート農業型】では,情報源として「ネットよりも身近な人」や「ネットの(公的機関の情報よりも)クチコミ」因子は低くなっている(表 7).この身近な人には農協や農業普及員も含まれる.ただし,本研究はインターネット調査であるため,調査対象者は生産者全体の集団に比べてインターネットを良く使う集団(若い,高学歴等)に偏りがあるが,インターネットを使わない集団が調査から漏れていてもこの結論そのものには大きく影響しないと考えられる.ほかにも書籍やセミナー・講演会を情報源とする度合いの因子も高いため,書籍・セミナーなどでの情報提供も有効と考えられる.
以上をまとめると,環境保全型農業の取り組み効果を見える化するツール等で環境保全効果の認識を高め,インターネットや書籍などの媒体を用いて環境保全型農業に関する情報提供を強化することにより必要性の認識を高め,対策技術の IT 化を推進して実行可能性を高める,といった方向性の普及活動が望ましいと結論付けられる.また,取り組み割合の低いセグメントへの普及活動は優先度は低いものの,さらに将来的な課題となる.