2021 年 2021 巻 8 号 p. 151-155
東日本大震災による避難指示区域では,人間活動の低下によって野生動物による営農再開時の農業被害リスクが増加 した.営農再開農地の孤立や集落機能の低下など当該地域特有の問題はあるが,農業被害リスク増加の構造自体は全国的に獣害が社会問題化した背景と同じであるため,有効な対策も一般的な総合対策であると考えられた.圃場への侵入防止技術として営農再開地域において選択されることの多い電気柵は,安価で高い防除効果を期待できる一方で,誤った設置方法で使用されることが多いことや,管理労力が大きい欠点があることを示した.他方,溶接金網柵は導入コストが高いが,管理労力の低さから営農再開地域におけるイノシシ用侵入防止柵に適していると考えられた.