教育方法学研究
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原著論文
イエナ・プランにおける「居間の教育」思想と学校改革
ペーターゼンによるペスタロッチーの受容と展開
安藤 和久
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2020 年 45 巻 p. 49-59

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抄録

本研究の目的は,ペーターゼンによるペスタロッチーの受容と展開に着目することで,イエナ・プランの理論と実践を歴史的展開に即して明らかにすることである。

1922-1932年に見られるペーターゼンのペスタロッチーへの着目の中で,ペーターゼンはペスタロッチーの教育実践を支えた教育形而上学と「居間の教育」思想を受容する。それを経て,1932年にはペスタロッチーを自身の現実主義的な教育理論の先駆者として位置づけ,人間論を根底に持つ「幻想なき教育科学」による教育学を構想した。それゆえ,1937年に新たに論じられた「学校居間」には学校教育に教えることの原風景としての「居間」を現実化する構想が見られるのであり,ペーターゼンによるペスタロッチー受容は,イエナ・プランを理論的にも実践的にも発展させることとなった。

インクルーシブ教育の先駆とされるイエナ・プランは,「居間の教育」思想を現実化する学校改革として見ることができる。ここから,人間論に基礎づけられた教育学を構想していく重要性や,学校に子どもの居場所をいかに保障するかという課題にたいして,空間構成や学級編成やカリキュラム編成を含めた学校全体のあり方を検討する必要性が提起されている。

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