名古屋文理大学紀要
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明恵と観音試論 ―夢と絵画の交錯―
小林 あづみ
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2020 年 20 巻 p. 39-60

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抄録

鎌倉時代の華厳僧、明恵上人(京都栂尾高山寺の中興開祖)について、観音菩薩に関する夢やコメント等を『華厳経』や『華厳経』の内容を絵画化した作品と対比させて考察した。結果、明恵が夢に見た観音は、自身が制作に関与した華厳変相図に基づくものであり、観音の住む補陀洛山を夢に見、普陀山(補陀洛山の写しとして知られる中国の観音霊場)を意識した場で仏事を行ったことが判明した。また、明恵が華厳の守護神として祀った善妙についても、その働きを観音と同一視している。明恵による観音への直接的言及は少ないが、その特色として挙げられる点(紀州での修行、法然による著作への反論、五秘密への傾倒、善妙を神として祀り善妙寺を建立する)の基底には観音があったのではないかと結論づけた。

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