抄録
手続き型言語によるプログラミングの技能修得のためには, プログラムの制御構造の概念を理解する必要がある.しかし, 初心者を対象にプログラミング教育を行う場合, プログラムの基本的な制御構造の理解が不充分であるために, プログラミングの技能修得に挫折する学習者がしばしば見られる.このような学習者は, ソースプログムの記述を行う時点でプログラム実行時の処理の流れをイメージできない.そこで, 筆者らは, 反対に, 制御構造のイメージ形成がプログラミング学習に役立つのではないかと考え, 制御構造のイメージとプログラムの理解度の関係を調査している.前報1)では, 制御構造のイメージを自由に絵で表現する方法で, 学習者のイメージを調べる調査について報告した.また, 調査の結果から, 制御構造の種類毎にそれぞれイメージが有り得ること, 学習者の持つイメージはその明確さや抽象度において個人差が大きく多様なものであることなどを指摘し, 調査によって集められたイメージを制御構造毎にそれぞれ数タイプのカテゴリに分類した.本報では, 前報の結果をふまえて新たに作成した選択肢式アンケートについて紹介し, アンケート結果をもとに学生の制御構造に対するイメージとプログラムの理解度の関係について報告する.本報の選択肢式のアンケートでは, 前報の自由型式のイメージ描写の結果に比べて, より類型化された形でイメージのパターンを抽出して解析することができた.また, どの制御構造についても, 処理の流れを表現したイメージ図形を選んだ学生の方がそうでない学生にくらべて, プログラムの理解度が高いことを示す結果が得られた.