熱帯農業研究
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原著論文
サトウキビ品種配布後の利用実態と維持管理について
寳川 拓生上野 正実川満 芳信
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2019 年 12 巻 1 号 p. 16-22

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抄録

サトウキビ品種の有効活用および維持管理は,持続的で安定多収生産の実現に対し重要な要素である.本研究では,品種リリース後の利用実態と維持管理について統計資料やアンケート調査により明らかにした.地域別の品種構成を見ると,1品種が3割を超える地域が多い.株出し栽培面積の割合が特に高い久米島,宮古島,種子島,与論島では土壌微生物相の単一化,植物体内の病原の蓄積などによる病害蔓延のリスクが高く,病害や気象災害への抵抗性の異なる3-4品種を同比率で栽培するなど使用品種の多様化が求められる.本島中南部,南北大東島,伊平屋島,奄美大島,喜界島,与論島では「その他品種」の割合が20~40%と高く,その要因として異品種の混植や奨励品種外の品種利用が挙げられる.また,適地適品種やリスク分散など,複数品種利用の利点が認知されていることが明らかとなった.一方で,異品種の混植および採苗や苗圃管理の煩雑化,品種数が多くて選択が難しい,など複数品種利用の課題も挙げられた.混植に関しては,欠株補植が主な原因と考えられ,計画的な採苗圃や補植用育苗床の充実によって解決可能である.また,生産者および普及者の双方が活用できる品種ハンドブックを作成し,効率的な選択および偏りのない構成をサポートする必要がある.

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© 2019 日本熱帯農業学会
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