熱帯農業研究
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12 巻, 1 号
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原著論文
  • 松田 大志, 北村 葵, 樋口 浩和
    2019 年12 巻1 号 p. 1-7
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/07
    ジャーナル フリー

    京都大学内の温室で栽培しているレイシ6品種(‘Bengal’・‘Chakrapat’・‘Kwai May Pink’・‘Pot Po Heung[八宝香]’・‘Souey Tung[水東]’・‘Tai So[大造]’)を供試して果実品質を調べた.2014年および2015年に人工受粉をおこない,収量性を評価した.また,収穫した果実を種子の形態で3種類(正常・しいな・痕跡)に分けて品質を品種比較した.‘Pot Po Heung’で種子がしいなの果実の発生率がもっとも高く50%だった一方,‘Kwai May Pink’でもっとも低く10–20%だった.‘Chakrapat’では,種子がほとんどなく痕跡しかない果実が35–50%みられた.‘Bengal’で果皮の赤い着色がもっともよかった.種子が正常な果実では,‘Chakrapat’がもっとも大きく重さが平均で34–36gあり,ついで‘Bengal’で31–33gだった.‘Pot Po Heung’がもっとも小さく20g程度だった.しいなの果実では,‘Bengal’がもっとも大きく25g程度だった一方,‘Souey Tung’がもっとも小さく15g程度だった.種子が痕跡しかない‘Chakrapat’の果実は平均で13–15gだった.可食部の割合が‘Kwai May Pink’の果実でもっとも多く74–82%だった一方,‘Bengal’では可食部はもっとも少なく65–76%だった.‘Chakrapat’および‘Tai So’で果汁の糖度が低かった.‘Kwai May Pink’および‘Pot Po Heung’で果汁の酸含量が低かった.‘Kwai May Pink’の食味がもっとも優れ,ついで‘Bengal’が優れた.‘Chakrapat’および‘Tai So’は食味が果実によって大きくばらつき,劣るものもあった.種子がしいなや痕跡の果実でも,種子が正常な果実と食味は変わらなかった.‘Chakrapat’および‘Kwai May Pink’で収量性が高かった.‘Kwai May Pink’は果実の品質が優れ,どちらの年度も収量性が安定して高かった一方,‘Pot Po Heung’・‘Souey Tung’・‘Tai So’は品質が劣り収量性も低かった.

  • 島田 温史, 冨永 茂人, 山本 雅史
    2019 年12 巻1 号 p. 8-15
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/07
    ジャーナル フリー

    パッションフルーツ栽培における果実品質の低下等の高温障害を緩和するため,昇温効果のある赤外光を遮蔽する遮光ネットを供試し,種々の程度の遮光処理がパッションフルーツの樹体生育および果実品質に及ぼす影響について検討した.その結果,遮光処理により気温および葉表面温度が低下した.弱遮光区(遮光率約30%)では避陰反応や葉の陰葉化を呈さず,光合成速度が高く維持され,他の処理区よりも糖酸比の高い果実が多かった.しかし,中遮光区(遮光率約40%)では樹体に避陰反応が現れ,強遮光区(遮光率約60%)では葉の陰葉化も進み,開花も抑制された.さらに,強遮光区では果実の成熟日数が長くなり,小果で糖酸比の低い果実となった.以上のことから,パッションフルーツ栽培において,赤外光を遮蔽する遮光ネットによる遮光処理は気温および葉温を低下させ,約30%の遮光で光合成速度を高くし,果実品質を向上できることがわかった.

  • 寳川 拓生, 上野 正実, 川満 芳信
    2019 年12 巻1 号 p. 16-22
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/07
    ジャーナル フリー

    サトウキビ品種の有効活用および維持管理は,持続的で安定多収生産の実現に対し重要な要素である.本研究では,品種リリース後の利用実態と維持管理について統計資料やアンケート調査により明らかにした.地域別の品種構成を見ると,1品種が3割を超える地域が多い.株出し栽培面積の割合が特に高い久米島,宮古島,種子島,与論島では土壌微生物相の単一化,植物体内の病原の蓄積などによる病害蔓延のリスクが高く,病害や気象災害への抵抗性の異なる3-4品種を同比率で栽培するなど使用品種の多様化が求められる.本島中南部,南北大東島,伊平屋島,奄美大島,喜界島,与論島では「その他品種」の割合が20~40%と高く,その要因として異品種の混植や奨励品種外の品種利用が挙げられる.また,適地適品種やリスク分散など,複数品種利用の利点が認知されていることが明らかとなった.一方で,異品種の混植および採苗や苗圃管理の煩雑化,品種数が多くて選択が難しい,など複数品種利用の課題も挙げられた.混植に関しては,欠株補植が主な原因と考えられ,計画的な採苗圃や補植用育苗床の充実によって解決可能である.また,生産者および普及者の双方が活用できる品種ハンドブックを作成し,効率的な選択および偏りのない構成をサポートする必要がある.

  • 團 晴行, 沖 陽子, 廣内 慎司
    2019 年12 巻1 号 p. 23-30
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/07
    ジャーナル フリー

    人口増加などを背景にコメの生産拡大が急務となっているガーナ内陸低湿地において,雑草防除がコメの生産阻害要因の一つとして挙げられる.被覆植物を植栽した水田水利施設では,導入植物以外の雑草を防除するといった維持管理技術の確立が重要である反面,被覆植物が田面に逸出し,水稲の生育に悪影響を及ぼさないような抑草技術の開発,さらには慣行農作業が被覆植物に与える影響についても研究する必要がある.このため,3種の導入候補植物を供した3つの試験を実施した.イネを移植する直前の雑草の生育が進行した稲田全面を対象に散布される代表的な3つの除草剤,グリホサート,プロパニルおよびブタクロールは,供試植物を抑草する一定の効果があり,農業改良普及員らが推奨する使用量を1/4量としても同程度の効果を示した.火入れにおいては,供試植物は一週間後から順調に再生するため,供試植物の毎年の再植栽が不要であること,火入れをすることで,供試植物の維持に必要な侵入雑草に対する手取り除草,および補植や刈り込み作業を省力化できる利点を確認した.本田での水管理に伴う2ヶ月の湛水期間では,供試植物を枯殺できず,落水4ヶ月後には再生する結果を得た.また,グリホサートを散布し,2週間以上,湛水させると供試植物を完全に根絶できることを実証した.

情報
  • 内野 浩二, 濱島 朗子, 岩田 浩二, 久木田 等, 熊本 修
    2019 年12 巻1 号 p. 31-35
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/07
    ジャーナル フリー

    鹿児島県垂水市では,2015年12月18日と2016年1月25日にそれぞれ最低気温-1.2 ℃と-6.3 ℃を記録し,熱帯・亜熱帯果樹が寒害を受けた.アボカド‘ピンカートン’では,-1.2 ℃の低温を記録した後に,花蕾,花房および葉の一部が褐変し,-6.3 ℃の低温に遭遇した後,4月までの間に樹体は枯死した.‘ベーコン’および‘デューク’では,-1.2 ℃の低温を記録した後には,寒害を受けなかったが,-6.3 ℃の低温に遭遇した後には,花蕾,葉および細い枝梢が褐変して,枯死したが,翌春には新梢が伸長し,新葉が展開するなど回復した.レイシでは,品種に関係なく,-1.2 ℃の低温を記録した後に,新葉と花房の一部が褐変し,-6.3 ℃の低温に遭遇した後に,樹体は枯死した.パパイアでは,品種にかかわらず,-1.2 ℃の低温を記録した後には,寒害の症状を示さなかったが,-6.3 ℃を記録した後には,樹体は枯死した.

シンポジウム
研究集会
平成28年度日本熱帯農業学会学会賞学術賞特別講演要旨
エラータ
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