2022 年 43 巻 5 号 p. 209-219
ビスフェノールA(BisA),ビスフェノールC(BisC),そしてビスフェノールB(BisB)といったイソプロピリデン基に代表される嵩高い成分をもつビスフェノール(ビスPhOH)成分導入によって,目的とする高い柔軟性と高描画能を両立するノボラック樹脂が見出されるものと考えている。であれば,これらよりも嵩高さを抑えた分子構造のビスPhOH 成分を導入した場合,柔軟性や描画能の特性が減じるはずである。これを立証するため,本報ではエチリデン基をもつビスフェノールE(BisE,4, 4’- エチリデンビスフェノール)を組み込んだノボラック樹脂を新たに合成し,その特性を確認した。 BisE 系ノボラック樹脂に架橋剤としてホルムアルデヒド(Form)とグルタルアルデヒド(Glu)を組み込むことで,それぞれ2100~2400,あるいは3900~6800 の比較的高分子量体のノボラック樹脂を得た。しかしながら,アルカリ水溶液溶解速度(DR)≧1400 Å/s となり,DR の高い性状を示した。そのため,描画可能範囲と残膜率の双方で基準を満足するBisE 系ノボラック樹脂を見出すには至らなかった。また柔軟性に関しては,BisE/Form ノボラック樹脂の場合,柔軟性の付与が認められなかったが,BisE/Glu ノボラック樹脂の場合は,BisA/Form やBisC/Form ノボラック樹脂と同程度の柔軟性を発現できた。 次に,ビスPhOH 類を導入したノボラック樹脂の柔軟性を横断的に比較すると,BisA/Glu,BisB/Glu,そしてBisC/Glu ノボラック樹脂>>BisA/Form,BisB/Form,BisC/Form,そしてBisE/Glu ノボラック樹脂>>BisE/Form ノボラック樹脂 の順となった。この様に,嵩高さをやや抑えたエチリデン基を骨格にもつBisE 系ノボラック樹脂は,イソプロピリデン基やメチルプロピリデン基を骨格にもつノボラック樹脂に比し,リソグラフィと柔軟性の双方の特性を大きく低下させた。