2023 年 44 巻 3 号 p. 139-155
ポジ型フォトレジストから形成されるドライフィルムは,膜質が脆く柔軟性に欠け,それをロール状に製品化することに難点がある。我々は,これまでにクレゾール-ノボラック樹脂のアルデヒド成分に着目し,グルタルアルデヒドを用いた自由連結鎖のアルキル鎖導入が柔軟性付与に良好であることを見出している。本稿では前報を上回る,より高い柔軟性の発現を図り,着眼点をアルデヒドからフェノール成分に移している。具体的には,フェノール成分として分子鎖骨格への嵩高いイソプロピリデン基をもつビスフェノールA(BisA),およびビスフェノールC(BisC),イソプロピリデン基を2 つもつビスフェノールP(BisP),およびビスフェノールM(BisM),嵩高さとアルキル側鎖伸長を実現するメチルプロピリデン基をもつビスフェノールB(BisB),嵩高さをやや抑えたエチリデン基をもつビスフェノールE(BisE)からなるノボラック樹脂などが挙げられる。ビスフェノール型ノボラック樹脂の柔軟性は,クレゾール型ノボラック樹脂のそれを上回り,特にBisB あるいはBisC からなるノボラック樹脂が高い柔軟性と高精度なリソグラフィ性能を発現した。これらの分子構造には,①嵩高いイソプロピリデンユニット等の分子骨格内へ導入,②架橋剤に自由連結鎖をもつグルタルアルデヒド等を用いたことによるフェノール成分間隔の拡大,③ある程度高い分子量をもつ,④水素結合を形成し易い分子構造をもつ等が,要件として必要であると結論づけた。