2024 年 45 巻 1 号 p. 24-34
コアセルベーションは高分子水溶液において観察される高分子濃厚相と希薄相への液液相分離現象であり,特に濃厚相をコアセルベートと呼ぶ。我々の細胞内ではコアセルベートがタンパク質を区画化しており,恒常性に重要な役割を果たしている。コアセルベートの内部では高分子間の動的な相互作用によりネットワークが形成されており,その特性が決定されている。そこで,人工高分子を用いて特性を制御したコアセルベートを作製し,タンパク質内包基材として用いる研究が進められてきた。特にイオン性高分子によって形成されるコアセルベートをタンパク質送達システム等へ応用するに当たっては,塩に対する脆弱性が最大の課題となる。本稿では,人工高分子を用いて作製されるコアセルベートのダイナミクスについて触れ,タンパク質内包基材として用いるために,耐塩性を付与するべく行われている近年の研究を紹介する。