2021 年 53 巻 8 号 p. 853-857
抗凝固薬(エドキサバン)内服中に上行大動脈血栓症を発症し,上行大動脈人工血管置換術を行った症例を経験したので報告する.症例は79歳,女性.心房細動でエドキサバンを内服していた.突然の腹痛を主訴に近医を受診し,造影CTで腹腔動脈塞栓症を認めたため当院へ搬送となった.入院後精査で上行大動脈壁に浮遊物を認め,上行大動脈血栓症疑いに対して上行大動脈人工血管置換術を施行した.病理所見では20×10 mmの有茎性血栓を認めた.術後,血栓の再発はなく,術後21日目にリハビリテーション病院へ転院となった.術後1年目の血栓の再発も認めていない.抗凝固薬内服中に大動脈血栓症を発症した報告は稀であるため,若干の文献的考察を踏まえ報告する.