2024 年 45 巻 2 号 p. 66-75
水素結合などの動的結合により架橋された高分子は自己回復性等の動的力学特性を示し,長寿命な材料として期待されている。一般に,amide などの剛直な水素結合性基の導入密度を増加させると架橋高分子の動的特性は低下する傾向にあり,力学強度と動的特性のトレードオフを解消する設計指針が求められている。近年,我々はvicinal diol(VDO)間の多重水素結合が柔軟で多様な結合モードを示すことを見出した。VDOで修飾したポリマーは高靭性でありながらも自己修復性を示し,上記のトレードオフが解消されていることが示唆されたが,その機構は未解明である。本研究では,構造柔軟な多重水素結合性基であるVDO で修飾されたポリマーと,剛直な多重水素結合性基であるamide を有するurazole で修飾されたポリマーを合成し,力学特性を比較した。